電源不要、手軽な操作の「調光ブラインド」を開発!ナノインプリントで偏光シートを一括成形し、スライド操作で透過率を多段階に。
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、2枚の偏光シートを数ミリメートルずらすだけで、光の透過率を多段階に調整できる調光ブラインドを開発しました。
電源を使わずに調光でき、フラットでお手入れがしやすい構造が特長です。
可視光に加えて近赤外・赤外光も制御できるため、遮熱効果による省エネルギーでカーボンニュートラルへの貢献も期待されます。
数ミリのスライドで「多段階調光」 透過率は30%から4%まで
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、重ね合わせた2枚の偏光シートの相対位置を数ミリメートル程度スライドさせることで、透過率を段階的に制御できるブラインドを開発しました。
従来の偏光板を用いた方式では「明るい/暗い」のON/OFF切り替えにとどまりやすい一方、今回の方式では段階調整が可能です。
試作したブラインドでは、スライド位置を0mm、2mm、4mm、6mmと変えた際に、可視光の透過率が30%、24%、13%、4%と段階的に変化したことが確認されています。

動画 開発した多段階調光ブラインドのスライド操作
研究開発は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)「研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)産学共同 JPMJTR24RB」の支援を受けています。
偏光の原理(マリュスの法則)を利用 偏光軸0°〜150°の領域を1枚に配置
今回のブラインドは、偏光を使った調光で、2枚のシートの重なり方で透過率を調整しています。
「マリュスの法則」といわれる、直線偏光が偏光子を通過する光強度が、偏光方向と偏光子の偏光軸の角度差によって変わる原理を使います。
産総研が開発したパターン偏光シートは、偏光軸が0°、30°、60°、90°、120°、150°の領域が並ぶレイアウトです。2枚を重ねてスライドすると、偏光軸の角度差が0°(明るい)、30°(やや明るい)、60°(やや暗い)、90°(暗い)となるよう設計されています。

段階数はニーズに応じて変更可能で、より明るい範囲・より暗い範囲に調整幅を広げる開発も進めているとのことです。
ナノインプリントで一括製造へ フラットで外観の違和感を抑える狙い
製造面では、専用に設計された偏光パターンを「ナノインプリント技術」で一括成形できる点が特長です。ナノインプリントは、微細構造を持つモールド(型)で樹脂などを型押しし、表面の微細構造を転写する加工技術です。
産総研がこれまでに開発してきた「三角波状ナノ構造型偏光子(ワイヤーグリッド型偏光子の断面構造を三角波状にしたもの)」の技術を応用し、ナノインプリントと真空成膜工程のみでパターン偏光シートの製造を実現しています。
これにより、従来の方式では必要だった偏光板のカット・貼り付け工程を不要にでき、パターンの境界はナノメートルスケールでつなげられるため、外観の違和感も抑えられています。

将来的にはRoll to Roll(ロール・ツー・ロール)技術の適用により、大面積で高効率な製造が可能になる見込みとのことです。
電源不要で遮熱制御にも期待 省エネと快適性の両立が課題に
現在のブラインドは、一部では液晶の調光ガラスが利用されているものの、電源が必要で導入先が限られたり、コストや配線施工が課題になるケースがあります。電源を使わずに調光でき、加工・設置が簡単なシート状のブラインドのニーズは高まっています。
ブラインドは調光だけでなく遮熱にも寄与し、省エネルギーを通じてカーボンニュートラルを実現する観点からも重要です。
今回の偏光シートは可視光だけでなく、近赤外・赤外光など波長が長い電磁波でも機能するため、住宅などでニーズのある遮熱調節への応用も期待されるほか、車載用赤外センサーなどのセンサー周辺部材として、環境光ノイズの光量調整に役立つ可能性も考えられます。
1月30日まで開催の展示会で公開中
この技術は、2026年1月28日~30日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催中の「MEMSセンシング&ネットワークシステム展 2026」で展示されています。
MEMSセンシング&ネットワークシステム展 2026 公式サイト
今後は大面積化と耐久性評価を進め、企業連携で社会実装へ
産総研は今後、大面積化技術の構築や耐久性評価を進め、企業との連携を通じて社会実装を推進し、省エネと快適性の向上を目指す方針です。
また、パターン偏光シートは意匠性を付与した表現(偏光アート)にも応用でき、住宅用ブラインドで調光時に模様を浮かび上がらせる用途や、アート・エンターテインメント分野などへの展開も視野に入れるとしています。

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