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「SDGsが奪われている」戦争・紛争地帯 – 渡部 陽一さん SDGs特集記事|リンクウィズSDGs
「SDGsが奪われている」戦争・紛争地帯

「SDGsが奪われている」
戦争・紛争地帯

――渡部陽一さんが語る戦争とSDGs Part1――

戦争・紛争とSDGs。実は深いつながりがあります。どういった繋がりがあるのか、また戦争・紛争地帯では実際に何が起き、誰が犠牲になっているのか。そして、私たちにできることはあるのか。
今回は戦場カメラマンとして活動中の渡部陽一さんにインタビューを行い、その実態を伺いました。全3回に分けてお伝えします。

【Profile】渡部 陽一(わたなべ よういち)さん

戦場カメラマン。学生時代から世界の紛争地域を専門に取材を続ける。戦場の悲劇、そこで暮らす人々の生きた声に耳を傾け、極限の状況に立たされる家族の絆を見据える。イラク戦争では米軍従軍(EMBED)取材を経験。これまでの主な取材地はイラク戦争のほかルワンダ内戦、コソボ紛争など。

サークル

戦争・紛争地帯でのSDGsの現状とは

――渡部さんは多くの戦争の現場を見られてきたと思いますが、戦争が起こる原因となっているのは何だと思われますか?

戦争が起こっている原因、その根源にあるのは貧困です。

地球規模での貧困という残虐な現実が戦いを引き起こし、限られた資源の奪い合いをしています。

水であったり、土地であったり、農作物であったり、海洋資源であったり、天然資源であったり。地球上の、そのルーツとなっている現場、水の資源……例えばアフリカ大陸とか、農作物の資源……例えばウクライナとか。

そういった資源が豊富にある場所と、それを奪おうとする場所との間で戦争が起きているように見えます。

 

  • 食べ物を求める人々(写真提供:渡部陽一さん)

――そのこととSDGsに関連はあると思いますか?

私が先ほど言った資源というのは、SDGsで世界規模で支え合っていこうとしているものの一部です。つまり、SDGsで支え合おうとしているものを、紛争や戦争で奪い合っているという現状があります。

また紛争や戦争が起きている場所では、そこで暮らしている方々の暮らし、生きるために必要なもの、水、土地、食べ物、医薬品、人が一日一日根源的に生きるために摂取しなければならないもの。それ自体が、壊され手に入らなくなっているということも忘れてはいけないことです。

そして、SDGs。資源をしっかりと循環させ、長期的に地球環境をしっかりと保っていくという意識は、やはり地球規模で持つべきものだと思います。

 

  • (写真提供:渡部陽一さん)

 

人間が生きていく上で、必要となっている資源が限られているからこそ、奪い合いが起こり、戦争が起こり、戦争で手にした資源を持った国が、強権的に他の国を管理してしまう。いわゆる、地球環境を制した国が、世界の戦争をすべて制してしまう。

そんな世界にならないように、世界規模で地球という共通の生きるための大切な財産を守っていこう。そこを独占させずに、壊させずに守っていこうという意識が2015年に世界規模で入ってきたと感じました。

 

ですが、その真逆のことが深刻化しています。資源をめぐる戦争で残虐な殺害が起こり、その資源を独占したものが他の国を制していく。

ロシアは、天然資源、石油、天然ガスの輸出大国です。真冬を迎えるヨーロッパ、ドイツ、フランス、ウクライナは、これまでロシアの天然ガスに頼ってきていました。ヨーロッパのすべての天然ガスの消費量の半分がロシアからの輸入です。

そのロシアが戦争で天然ガスを遮断したため、ヨーロッパの国が今年の冬、越えることができるのかどうかの問題に直面しています。ロシアはそのことを知っているので、天然ガス、石油のパイプラインを遮断するぞとロシア・ウクライナ戦争の時から圧力をかけていました。

ロシア・ウクライナ戦争の初期の頃、ロシアの天然ガスに最も依存してきたドイツは、ロシアがウクライナに戦争を起こしたときもウクライナを支えようとしませんでした。ですがヨーロッパ側からバッシングを受けて、ドイツも腹をくくり、こんな戦争は認めない、天然ガス、石油、パイプラインをカットされても、自分たちでやっていくという政策にシフトしたのです。

 

資源を確保したものが戦争を優位にコントロールし、最終的に戦いを制した場合は、その資源を使って常に脅しをかけていく。ある面、抑止力にもなっています。

SDGsの背景となっている海洋資源や森林の資源を独占させることは、人びとの支え合いや環境保全にも影響があり、地球の崩壊にも繋がります。

SDGsは地球規模で、国、宗教、国境の概念抜きで管理していこう、未来の地球のライフラインを守ろう、という大切なメッセージですね。だから私はSDGsと戦争は直結していると思っています。

 

  • (写真提供:渡部陽一さん)

 

――つまり現在、戦争が行われている土地ではSDGsで行おうとしていることの真逆のことが起きているということでしょうか?

そのとおりです。世界で守ろうとしているものを壊しています。森林であったり、水質資源であったり、土地も奪い奪われ、そこで暮らす方々が生きることができない環境にしているからです。貧困がすべての戦いの原点。そして貧困が生まれると、その地域で力を持っている者、特に武力的に力を持った者がその地域を独占します。これがそのまま、戦争につながっていく、という流れが地球上で繰り返されてきていますね。

 

  • 様々なものが奪われる戦争(写真提供:渡部陽一さん)

サークル

戦争を起こす目的と化学兵器の関係

――紛争や戦争は目的があって起こるということですよね。ですが、争いのさなかに化学兵器を使うこともあります。

化学兵器は勝敗が着いた後にも現地に後遺症として残るものだと思うのですが、どうして使われるのでしょうか?

戦い方として勝利を引き寄せるための戦術の一つだからです。その戦術というのは、相手の国のライフラインを破壊することです。

空港、駅、線路、橋、高速道路、港、通信施設、病院、そしてそこで暮らしている人たちの土台となる、その土地そのものを破壊します。人がそこで暮らせないようにすることが戦いを制する、残虐な方法です。

  • 戦争によって破壊されるライフライン(写真提供:渡部陽一さん)

その土地を壊す一つの方法が、化学兵器によって汚染させて、もう二度とその国の国民が国力を再開させたり、また敵対してくるような強さを保ったりできないように、消してしまうというもの。

つまり、その土地を廃墟にしてしまおうということですね。その戦い方を、現在ロシアはやっています。

イラクで行われた化学兵器劣化ウランも土地を壊すということがわかっていますし、化学兵器でどんな影響が出るのかの検証・実験というものを戦争ではよく行っています。

 

壊すこと、そこで暮らしている国民がその土地で生きることができなくなってしまうことを平気で行います。通常であれば、そんな残虐非道なことはしてはいけないと考えることができるのですが、戦争という概念に立たされた国では平気で飛び越えてきます。

「戦いに勝つのであれば、それはしょうがない」という論理で、勝手に相手の責任として戦いを強引に残虐に突き進めていくのです。

 

――戦争は相手の土地を攻撃して、相手の土地ごと自分のものにするというイメージだったのですが、今はその考えはなくなっているのでしょうか?

そうですね。かつての帝国主義時代のように、植民地にしたりそこから産業を引き抜いたり、そういった概念では今はなくなっていますね。

サークル

紛争・戦争ではいつも誰が犠牲になるのか

――紛争や戦争で犠牲になるのは立場の弱い人なのでしょうか?

そのとおりです。戦争で変わらないこと、それは戦争の犠牲者はいつも子供たちということ。

そして子供たちを支えているお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、その家族、親族、友人。それが輪となって、戦争によって次々と犠牲となっていく。

生活の基盤である教育であったり、医療であったり、農業であったり、人が暮らす上でまず欠かせないすべての源泉が戦争によって、理屈抜きで壊滅され、奪われています。

 

戦争の犠牲となる子供
(写真提供:渡部陽一さん)

 

――子供が犠牲になるっていうのは子供が殺されやすいということですか?

子供たちが直接、銃を突きつけられて命を奪われるだけではなく、飲み水がすべて汚染されて、その水を飲むことによって子供たちの命を奪われたり、食べ物がすべて破壊されて食べ物がなくなって子供たちが痩せ細って病気になって亡くなったり、怪我をしたり、ということも含まれています。

 

また栄養失調で弱くなった子供たちが、病院に助けを求めたときに、その病院がピンポイントで壊されていたりと、生きていくために必要な資源や場所が破壊されているということが大きいと言えます。つまり生きることが許されない環境です。

生きることを遮断する。これが残虐な侵略戦争の一種です。

 

健康な生活も脅かされる
(写真提供:渡部陽一さん)

 

 

――現在、戦争が行われている国でSDGsに取り組むのなら、まずは戦争を終わらせるところから始めるしかないのでしょうか?

そのとおりです。戦争がある限り、そこで子供たちが犠牲になっていくのですから。

その環境下では、戦いそのものを止めること、その国が止めることができなければ、周辺の第三国が介入をして、戦争の停止以前の状態にしてあげなければいけません。

勝者、敗者ではなく、戦争そのものを休止させる。これが第三国の大切な任務となっています。

サークル

なぜSDGsは世界規模で取り組む
必要があるのか

――渡部さんのお話を聞いていると、SDGsは個別で行なうものではなく、協力をしたりサポートをしたりということを国単位でも行なっていくものという風に聞こえました。

SDGsは個々が行なうというよりは、協力し合うというものなのでしょうか?

SDGs は個々で行なう面もあれば、世界規模で繋げて行なう面もあると私は考えています。

例えばSDGsを世界規模でつなげていく時、まったく心からのボランティア精神や、その構造を作るためにいかなる利益も生まず、いかなる利益もそこで流動させないという連帯では、人が生きていく上では長続きはしないものです。

 

SDGsという大切な考え方を枠にして、その輪郭をさまざまな形で利益が出るようにしたり、利益を逆に供給できる形であったり、それぞれが生きる環境を整えていける、お互いの手の内をしっかりと分かり合いながら支えていこうというものでなければ続かないと思っています。

ビジネス戦争ではなく、ビジネスとしても成立する、ボランティアとしても成立する、そしてNGOな考え方であっても成立する、そして国連が関わってきても成立するということが大事です。

 

どの考え方も、しっかりとお互いの立ち位置を認識して認めあえる。

利益を得るから、それはだめとかではなく、利益を得るからこそ、それを回していくことができるという考え方。長いスパンで、それぞれの輪郭を当てはめる方法をみんなで考えて、利益も発生するようにする。

それができれば次のシフトで、構造やシステムを作ることができる。それぞれがみんな今できることを行い、次のステージである地球環境を整えていこうという方法を模索することが必要だと思います。

 

企業が加わってくると絶対に最後の目的は利益を得ることになりますし、国が入ってくれば国の目的である外交や国益を得ることが絶対条件になります。これらを認識した上で、形を整えていこうということが、SDGsの国際枠だと感じていますね。

 

サークル

さまざまなことが絡み合う世界を
SDGsでひとつに

――世界的な目で俯瞰した時にSDGsの項目が17個もあるのには意味があると思いますか?

そうですね。SDGsが17の項目でできているのは、「どれが好きですか?」と見せてくれているような気がします。

自分だったらどこが好きで入っていけますか? 水問題ですか? 海のこと海洋プラスチックのこと、なにかこの中でちょっとピーンとつながるものがあったら、そこから入っていけば、気づけることがあるんじゃないでしょうか。そういった思いが込められている気がしますね。

やわらかい色合いであったり、たくさんの方々が触れ合える色合いであったり。オープンに見せてくれている、その印象は最初見た時に感じましたね。自分だったら水から入る、魚関係から入る、というそんなSDGsのスイッチになりそうです。

 

戦争でも国際政治でもビジネスでも教育でも、決してそれぞれが分裂してその国で成り立っているのではなく、必ず絡み合っているものです。そしてすでに重なっている現実をSDGsが見せてくれた印象を持っています。

孤立しているものではなくて、こっちにもある、こっちにもある、すべてが同じ土俵の中で重なり合っていることを気づかせてくれる、つまり17の選択肢ですね。

まずは「どのボタンを押してみますか?」という、入り口のように私は感じましたし、どこから入っても全ては繋がっているということも感じています。

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