全国46スキー場が脱炭素・サステナブル化推進!再エネ導入・森林整備・食の見直し・環境教育プログラムなどの多様な取り組み
気候変動の影響が年々深刻さを増すなか、サステナブルな行動をするスキー場が全国で増えています。
一般社団法人Protect Our Winters Japanは、脱炭素・サステナブル化を進めるスキー場のネットワークである「サステナブル・リゾート・アライアンス(SRA)」発足から3シーズン目の成果と現況を、2025-26シーズンインに合わせて公開しました。
SRAは2023年発足時の16スキー場から、全国46スキー場へと拡大。サステナブルなスキー場経営と、それを支え・応援する滑り手の活動は全国規模の動きに成長しています。
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全国規模へ成長するSRA
サステナブル・リゾート・アライアンス(SRA)は、北海道から関西まで全国11都道府県・46スキー場に拡大しており、全国的なサステナブル・リゾートのネットワークに成長しています。
2024-25シーズンからは、滑り手がサステナブルなスキー場を直接応援できる仕組みとして、寄付付きリフト券「POWチケット」を導入しています。初年度7スキー場での導入から、現在は11スキー場へ拡大。昨シーズンはのべ1,196名から総額807,700円の寄付が集まったのだとか。
寄付金は全額が再エネ導入や森林整備など各スキー場の環境施策に使われ、使用用途と成果は全て公開されます。本格的なシーズンインを前に、昨年実績を超える寄付がすでに集まったスキー場も。POWチケットは、滑り手の「冬を守る」思いを行動に変える仕組みとして広がりはじめました。
また、SRA加盟スキー場の取り組みは量・質ともに拡大し、エネルギー関連の施策だけでなく、森や生態系を守る取り組み・フードロスの削減など食の見直し・地域コミュニティと連携した環境教育など、多様な切り口からのサステナブル化が各地で進んでいるそうです。
気候変動による雪不足が今後さらに深刻化すると予測されるなか、スキー場が経営の重要課題として自ら脱炭素化に取り組み、滑り手がそれを支えるという枠組みは、観光産業における新しいモデルケースとしても注目されています。

再エネ100%へ動き出すスキー場
SRA加盟スキー場では、2シーズンを経て、取り組みの幅が大きく広がったそうです。
まず、再生可能エネルギー由来の電力を使用しています。スキー場のCO₂排出の多くは、リフト・ゴンドラや施設運営に使われる電力に由来します。そのため、再エネ導入は、脱炭素化に向けた最も効果の大きい取り組みの一つです。
加盟スキー場のうち、エイブル白馬五竜、かたしな高原スキー場、ニセコ東急 グラン・ヒラフ、ハンターマウンテン塩原、たんばらスキーパーク、タングラムスキーサーカス、蓼科東急スキー場の7スキー場が、施設で使用する全ての電力を再エネ100%に切り替え済みだそうです。
一部施設・設備からの段階的な再エネ電力メニューへの切り替えや、非化石証書を活用したイベント単位での再エネ導入など、POWチケットによる寄付も有効に活用しながら、それぞれのスキー場が個別の特性に応じた形で、できるところから着実に取り組みを進めているのだそう。

幅広い環境施策を実施
そのほかにも、以下の取り組みを行なっています。
◎ 施設や設備の省エネを進める
スキーセンターやナイター照明のLED化による省エネ化や、熱交換器の高効率化及び配管の見直しによるエネルギー消費量の低減、省エネ性能の高い圧雪車への入れ替えなどが行われています。
◎ 森と生態系を守る
間伐などの適切な森林整備によって光合成を促進し、CO₂の吸収量を高める取り組みや、CO₂を固定した間伐材の再利用も進められています。例えば、白馬岩岳スノーフィールドではナラ枯れ被害木を再利用したベンチを制作するなど、森林資源を活かした取り組みが行われています。
また、エイブル白馬五竜における自然共生サイトの登録や、タングラムスキーサーカスでのG認証取得など、ネイチャーポジティブを目指したスキー場運営に踏み出す事例も生まれています。
◎ 食を見直す
札幌テイネスキー場では、フードロス削減のために、チャーシューの切れ端やだし汁をとった後の昆布など、料理の下ごしらえで使った食材などを有効利用したおにぎり「気まぐれおにぎり」を販売。各スキー場で地産地消メニューやヴィーガン対応メニューの導入も進んでいます。
◎ ゴミを減らし、活用する
プラスチック容器の廃止や、ウォーターサーバーを設置しマイボトルを推奨したり、使い捨てカイロを回収してリサイクル利用を促進する取り組みなど、ゴミを減らすための工夫が実施されています。エイブル白馬五竜では、POWチケットによる寄付も活用し、生ゴミを微生物の力で水に分解する生ごみ処理機が導入されました。
◎ 環境負荷の少ない移動を後押し
スキー場への移動時に排出されるCO₂を抑えるため、EV充電施設の充実、複数人での利用で駐車場を無料にするなど乗合の促進、駅からスキー場までのシャトルバスの運行などが実施されています。
◎ 環境に配慮した素材の活用
リサイクル素材を利用したレンタルブーツの導入、廃棄される尾瀬の木道を再利用したパンフレット作成の他、スタッフのワークウェア、ステッカーやファイルなどのノベルティに環境配慮型の素材や製法を使う事例が広がりつつあります。
◎ 地域とともに・滑り手とともに
戸隠スキー場では、場内で出た生ゴミをNPO法人と連携して再利用し、堆肥として活用したり、地域資源である茅を活かしたスノーパークをゲストと共に作るなどの取り組みを進めています。そのほかのスキー場でも、地域住民や滑り手と共にマウンテンクリーンを実施したり、地元の農家の規格外品を活かした商品開発、地域住民と連携した、自然をフィールドにした遊びや営みを感じられる「サステナブル・ツアー」の企画など、スキー場が地域コミュニティと一緒になって、冬を繋ぐ取り組みが工夫されています。
SRA今後の展望
SRAの取り組みが広がってきた背景には、雪がなければスキー場は成り立たず、仕事や地域の暮らしも続けられないという、関係者の切実な想いがあります。スキー・スノーボードを自分たちの世代だけでなく、次の世代にも残していきたい。その想いが、取り組みの原動力になっています。
気候変動の影響を最前線で感じたスキー場の経営者やスタッフが、この課題に向き合い、動き出しました。その姿勢に共感したスキーヤー・スノーボーダー、企業・団体の応援に支えられ、取り組みは着実に広がっています。
スキー場での実践が地域社会へ、そして他のスノーリゾートへと波及していく。スノー業界の行動が、社会全体の気候アクションを加速させる。私たちはそう信じて、皆様と共にSRAの取り組みを進めていきます。

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■情報提供元:一般社団法人Protect Our Winters Japan
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