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ダム氾濫のリスク、増える“堆砂”を干潟に移してアサリ復活へ！福岡工業大学の研究が環境大臣賞を受賞

Link with SDGs編集部最終更新日: 2025-10-07

福岡工業大学社会環境学科の田井研究室は、ダムに堆積する土砂で氾濫リスクの要因とされる「堆砂（たいさ）」を有明海の干潟へ活用。干潟では減少の回復が望まれるアサリが増加し、アサリの成長を促したことを実証しました。

リスクである堆砂を海の資源復活に活かしたとして高く評価されたこの研究は、「令和7年度　河川基金研究成果発表会」の環境大臣賞を受賞しています。

氾濫リスクとなるダムの「堆砂（たいさ）」は全国的な課題

ダムの底は、川の上流からダムへと流れ込んできた土砂が徐々に堆積してしまいます。

この堆積した土砂を「堆砂（たいさ）」と言いますが、日本のダムは堆砂が深刻な課題で、国土交通省が所管する全国のダムのうち、10％以上のダムで計画堆砂量を超過していることが明らかになっています。

（令和5年度末時点：68ダム/575ダム　資料：https://www.mlit.go.jp/river/dam/taisa/taisha_joukyouR6.pdf）

ダムの堆砂の進行は貯水容量の減少や取水障害を引き起こすだけでなく、貯水量の低下によって、災害時に十分な氾濫防止機能を果たせなくなるリスクが発生します。特に近年のゲリラ豪雨による災害発生などに備えるためにこの対策は急務と言えます。

福岡工業大学社会環境学科の田井研究室はこの堆砂に注目。

熊本県の緑川ダムは、平成28年の熊本地震による上流域の崩壊とその後の出水などを受けて貯水池内の堆砂が進行し、2023年度時点で堆砂容量は93.6％に達しており、堆砂を排出するための早急な対策が求められていました。

また、熊本県のアサリ漁獲量は1980年代以降減少が続いたため、アサリ資源を回復させるためのさまざまな取り組みがされています。

このような背景から、緑川ダムの堆砂を下流の有明の干潟に運び、アサリの生息する干潟に覆砂して良質な生息砂床として活用したところ、ダム堆砂が干潟に定着するともにアサリの成長を1.6倍ほど促すことを実証しました。

リスクである堆砂を海の資源復活に活かすこの研究は高く評価され、「令和7年度　河川基金研究成果発表会」において環境大臣賞を受賞しています。

研究では緑川ダムの堆砂土を昨年（2024年）3月に緑川河口の緑川干潟に運搬して、アサリの生息砂床として干潟に散布しました。

堆砂土には以下の特性があり、アサリの生育に適していると考えられます。

● ダムの堆砂土の成分である砂は粒子径が比較的大きく、潮流の影響を受けて流れ去りにくい。

● 散布した地点に留まり、安定した生息地になる可能性が高い。

● 堆積土に含まれる16㎜程度の大粒の礫（れき）※は潮流で揺さぶられないため、アサリの稚貝が安定して定着しやすく、呼吸のための水管も伸ばしやすいため、貧酸素に陥らない生育環境につながる。

研究で散布した干潟の5地点では、覆砂（ふくさ）した領域は約半年の経過後も残存し続けました。

さらに、領域内では覆砂から4カ月経過以降からアサリの個体数の増加傾向が認められ、殻長の伸長については領域外と比べて2倍程度になる地点もあり、特に著しい効果が見られました。

今回の研究は、実証海域と河口域に関係する川口漁業協同組合および緑川漁業協同組合との綿密な協議を重ね、さらに熊本県環境立県推進課の協力のもと、養殖ノリのシーズンなど地域の漁業活動への影響を十分に考慮して実施されました。

大規模な覆砂について現地の関係者の理解を得られ、実際に有用なデータが取られた希少なケースで、世界的に見ても初めてと言える実験データが得られたとのことです。

また、今後の課題は「なぜ、アサリは堆積砂によって作られた環境下で著しく成長したのか」「個体数の増加について与える影響」などの詳細な分析となります。成長促進のプロセス類型化して解明し、有明海の水産資源の復活により寄与できる知見の獲得を目指していくとしています。

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■ニュース提供元：福岡工業大学

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