「もしビオトープの上に校舎を建てる計画が出てきたらどうする?」福岡市の公立小学校にて“生き物オタク”の建設コンサルタントが特別授業を実施!
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今回、株式会社長大の建設コンサルタントとして環境調査・生態系保全に携わる中谷郁也さんを講師に迎え、福岡市内の公立小学校6年生133名を対象に「生き物と環境」「食物連鎖とインフラ」をテーマとした特別授業を実施しました。
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理科とキャリア教育をむすぶ
同授業では、“生き物が好き”をきっかけに専門職へ進んだ講師のリアルなキャリアを紹介するとともに、インフラ整備と生態系保全の両立という社会的テーマを、子どもたち自身の問いと議論につなげました。
理科の単元(食物連鎖・生態系)とキャリア教育を横断させ、子どもたちが「好き」を将来の仕事と結びつけて考える主体的な学びの場を提供したそうです。
先生方から「理科の“生物と地球環境”を、より実感をもって学ばせたい」という声が集まったことが授業の背景だったのだとか。小学校ではほぼ全学年で生き物を扱う単元がありますが、「命のつながり」や「人との共存」を教員だけで深めることには限界があります。
そこでSPOT TEACHERは、環境保全とインフラ整備の両立に携わる“建設コンサルタント”という専門職に着目したそう。
生き物を守るための調査や提案を行う現場の声を学校に届けることで、「生き物が好き」という子どもたちの気持ちを、社会につながる学びへと発展させる授業を設計。
今回は特に、理科とキャリア教育をつなぐ実践として実施したそうです。

生き物と人間の暮らしをどちらも守るには?
今回の授業は「生き物と人間のくらしの両方を守るには?」という問いを軸に進行したのだそう。
冒頭、中谷氏は自己紹介としてこう語りました。
「小さいころから生き物が大好きで、小学校・中学校・高校・大学と、ずっと生き物のことばかり考えてきました。昆虫を捕まえるために海外に行くこともありますし、鳥も大好きで、見たらすぐ名前がわかるくらいです。いまの仕事も、生き物が関係しています。」
この“好きすぎる告白”に、教室は一気になごみました。
「ぼくもクワガタ飼ってる!」「うちはハリネズミ!」と次々に声があがり、教室はたちまち“生き物談義の場”に。中谷氏は一つひとつに反応しながら、「生き物が好き」という気持ちが決して“趣味だけで終わらない”ことを、ごく自然な会話の流れの中で伝えていきました。
その後、話題は「建設コンサルタント」という仕事へ。
「建設コンサルタントって、工事をする人だと思われがちなんですが、僕の役割は“工事をする前に調べること”なんです。」
スライドには、双眼鏡や網を手に野外調査を行う中谷氏の姿が映し出されました。
「新しい道路や橋、建物をつくるときには、その場所にどんな生き物が暮らしているかを必ず調べます。そこに貴重な生き物がいるなら、守る方法を一緒に考えます。どうしても守れない場合は、生息地を別の場所につくったり、工事の仕方を工夫したりします。」
日本では、道路やダム、橋といった社会インフラを整備する際にも、生態系への影響を調査し、保全策を考慮したうえで進めることが法的にも求められています。インフラ整備と自然保全の両立は、実は必ずどこかで専門家が責任を持って考えている領域であることが、具体例を交えながら紹介されました。
「もしビオトープの上に校舎を建てる計画が出てきたらどうする?」という問いかけには、
「いやだ!」「生き物がかわいそう!」という声があがる一方で、
「でも学校は必要かも…」と悩む声も。
「どっちも正解なんです」と中谷氏。
「人が生活するための道や建物も必要。でも、生き物の場所も必要。だから“どう守るか”を具体的に考えるのが、僕たちの仕事です。」
授業では、生き物カードと環境カード(森・草地・ビオトープ・川など)を使って「どの生き物がどこで暮らすのか」を子どもたち自身が分類する活動も行いました。黒板いっぱいに並んだカードに、一本の“道路カード”を通してみると、子どもたちからは「カエルが危ない!」「トンボがいなくなる!」「でも道路がないと人が困る!」といった声が次々とあがりました。
さらに、猛禽類(タカなど)の巣が開発予定地にある場合の事例も紹介。
「巣ごと引っ越せばいい」という素直な発想に対して、中谷氏は「実はそれでもうまくいかないことが多いんです」と答え、巣の形を再現して別の木に設置するなど、専門家チームが現場で行っている具体的な工夫を紹介しました。
「そんなことまでやってるの?」「すごい!」と驚きの声が教室に広がりました。

クラス全員にプレゼントも
授業後半では、子どもたちの集中はさらに高まりました。
「これからクイズをします! 間違えたら座ってください。最後まで残った人がいたらプレゼントがあります!」という言葉をきっかけに、生き物クイズがスタート。
画面に映し出された一羽の黒い鳥に「カラス!」「オオバン!」と声が飛び交い、正解発表のたびに大歓声。モズの“はやにえ”の写真には「こわい!」と悲鳴が上がる一方、アメリカザリガニの話になると「うちの近所にもおるー!」と一気に身近な話題へ。
最後は、クイズに挑戦したクラス全員に“オニヤンマくん”がプレゼントされました。
「オニヤンマは生態系の頂点にいる昆虫のひとつ。これを教室に飾ると虫よけ効果もあるんですよ。」
「すごい!」「本当に効くの?」と興味津々の声が上がり、拍手と笑顔で授業は締めくくられました。

「好き」という気持ちが仕事につながる
講師、担任、生徒それぞれの感想は以下の通りです。
【講師感想】
(株)長大 建設コンサルタント・中谷郁也氏
「生き物の命の大切さや、工事と動植物の関係についてお話しでき、キャリア教育としても子どもたちに届けたい内容になったと感じています。インフラ整備が自然に与える影響を正しく判断するには、守るべき生き物の生態や生息環境を深く知ることが欠かせません。そして何より伝えたかったのは、『生き物が大好き』という気持ちを、そのまま社会の役に立つ仕事につなげられるということです。本当に楽しい時間でした。」
【6学年担任感想】
「理科『生物と地球環境』の学習を終えた後の発展的な授業として、中谷さんにお越しいただけたのはとても良い流れだったと思います。地球は人間だけのものではなく、食べ物・水・空気を通して生き物同士がつながっていることを学んだ子どもたちにとって、今回のお話はまさにぴったりの内容でした。
中谷さんの会社での取り組みは、地球環境を守る努力としてだけでなく、“そうした職業がある”という新しいキャリア教育の学びにもつながったと思います。クイズなども交えながら進めていただき、子どもたちは終始楽しそうに参加していました。いただいたオニヤンマくんは、各教室で大切に活用させていただきます。この度は素敵なスポットティーチャーとの出会いをいただき、本当にありがとうございました。」
【児童感想】
「今日の授業を受けて、道路をつくるときには、私たちは便利だけど生き物は住む場所がなくなってしまうことがあると知りました。だから橋をつくったり、生き物を安全な場所に移したりする必要があるんだと思いました。これからも生き物を大切にして、生き物も私たちも幸せに過ごせる社会になったらいいなと思いました。」
「前までは生き物はちょっと苦手で、あまり考えたことがなかったけど、少しでもいいから『生き物に関わってみようかな』と思えるようになりました。クイズもすごく楽しかったです。これから生き物を見たときは、もっとちゃんと見てみたいです。」
「“人間も植物も動物も大事”という言葉が心に残りました。私も中谷さんみたいに、好きなことに全力で向き合う生き方をしたいと思いました。私は生き物が大好きで、いつか生き物に関わる仕事がしたいので、もっと知りたいと思いました。」
「最近、身近でいろいろな工事が進んでいるけど、前からそこに住んでいた生き物はどうなるんだろうと気になっていました。今日の授業で、工事をしていい場所なのかをちゃんと調べて判断していることがわかって驚きました。将来は建設関係の仕事に就きたいと思っているので、とても参考になりました。」

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■ニュース提供元:共育パレット株式会社
https://www.city.fukuoka.lg.jp/keizai/r-support/business/documents/7tomoiku.pdf
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