ウクライナの復興を見据え、がれきを利用したリサイクルコンクリートの研究展示をスタート
学校法人多摩美術大学は、2024年12月2日~2025年1月13日の間東京ミッドタウンにて「リサイクルコンクリート~ウクライナにおける建築廃材のリサイクル研究」の展示を行なっています。
ウクライナの紛争によって生まれたがれきをリサイクルし、復興を目指した展示となっているそうです。
震災での知見を活かし、がれきのリサイクルへ
同学プロダクトデザイン研究室に在籍するウクライナからの研究員アリサ・チェンさんは、地球環境に影響の少ない「リサイクルコンクリート」技術と、東日本大震災を経験した日本の災害がれき処理のノウハウを組み合わせた研究を行なっています。ウクライナの紛争によって生じた建物がれきを用いて、ウクライナの復興に向けたロードマップと未来ビジョンを描いているのだそう。
これらは、循環型経済の都市計画におけるリサイクルコンクリートの活用促進につながる取り組みです。
アリサ・チェンさんについて
アリサ‧チェンさんはウクライナ北東部のハルキウ市にあるKharkiv State Academy of Design and Arts(ハルキウ州立デザイン芸術アカデミー)を卒業後、首都キーウに移り住んでいました。日々激化する戦火の中で戦後の復興を見据え、戦争によって破壊された地域で建築材料をリサイクルする方法を何とかしたいと、同学の支援プログラム(※)に応募して2022年に研究生として来日しました。2024年より本学の研究員として本研究に取り組んでいます。
※多摩美術大学ではロシアによるウクライナへの侵攻に対する支援策として、2022年度に研究・制作場所を安全に確保することができなくなったウクライナ国籍などを有する美術・デザイン系の学生を研究生として受け入れ、研究・制作環境を提供するプログラムを実施いたしました。
CO₂が抑えられるなど、環境にもやさしい
壊れた建物がれきで再びコンクリートを作るリサイクルコンクリート技術は、がれきの保管場所や移動コストなどの削減に繋がるばかりではなく、素材調達が現場でできることで材料輸送に伴うエネルギーやCO₂の発生も抑えられるそうです。
また、従来のコンクリートは製造工程でCO₂など温室効果ガスが大量に発生してしまいますが、リサイクルコンクリートは、製造工程での温室効果ガスの発生も大幅に抑えられます。
しかも、従来製法のコンクリートとほぼ同等の強度が出せるそうです。
東京大学のリサイクルコンクリートのプレスリリースはこちら
https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/3939/
ウクライナ復興に向けて、日本の技術を活用へ
日本でも災害の際に、街ががれき化してしまうことも。東日本大震災の際、東松島市は津波で大きな被害を受けました。そこで行なわれたのが、「東松島方式」と呼ばれる手作業による分別でがれきを資源に選別する方法です。
この方法は、資源を細かく分別して処分費用を大幅に抑えられるだけでなく、その手選別により、そこに住む人々に働く場を提供し、被害に遭った人たちが集うコミュニティの場にもなったのです。
この東松島方式は、熊本の震災、能登の震災でも活用されている方法であり、この方式をウクライナの復興でも活用しようとして研究が進んでいます。
紛争や災害によって破壊されがれきになってしまっても、それぞれの建物には、そこに暮らしていた人たちの想いがあります。リサイクルコンクリート技術はそこに合ったものから新たな建築材料を作り出せる技術です。そのため、人々の想いやその土地固有の文化までをも取り込みながら、復興が目指せる技術となり得るそうです。
今回の展示について
東京ミッドタウン・デザインハブ第111回企画展「デザインの風が最初に触れる場所」風が草原に触れるときに新たな景色が生まれるように、 デザインが新たな形や概念として現れる瞬間、 そこにはまだ見ぬ可能性が広がっています。 これからデザインはどこを目指すべきなのか、 我々にもその答えはありません。 その中でも、AIとデザイン、サーキュラーデザイン、 ストラテジックデザイン、デザイン人類学、そして遊びのデザインという Tama Design Universityの5つのディビジョンを通して、 デザインの新しい地平を見出そうと試みています。 活動を通じて微かに見出される、 デザインが私たちのこれから世界をどう形作り、切り拓いていくのか、 その風を感じていただければと思います。
会期:2024年12月2日(月)~2025年1月13日(月) 11:00~19:00 ※12月28日(土)〜1月6日(月)は休館 入場料:無料 会場:東京ミッドタウン・デザインハブ(東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5F) 主催:東京ミッドタウン・デザインハブ 運営:多摩美術大学 TUB 監修:永井一史(多摩美術大学 統合デザイン学科教授) ディレクター:高見真平(多摩美術大学 情報デザイン学科講師) 会場構成:髙田ふみ 制作協力:三浦あかり、吉川義盛
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