SDGsで優先的に取り組むべきゴールに物価高が影響?
株式会社インテージは、2020年から継続的に実施しているSDGsに関する調査(全国15~69歳、2,513人)の分析結果を公開しています。SDGsの認知率は8割超で、昨年と同水準。認知としてはほぼ上限に達したのではないかと言われています。中でも「優先的に取り組むべきゴール」は世相を反映しており、「平和と公正をすべての人に」が2位となった一方で、2022年は首位だった「貧困をなくそう」が4位に下がりました。
また2021年~2022年は上位10位圏外だった「働きがいも 経済成長も」が7位に上昇。物価上昇・生活費高騰に直面する中、賃金が上がらないと生活は苦しいままという背景があると考えられます。
SDGsの認知度は83.7% 2020年から約3倍に
SDGsの認知率は2022年まで毎年大幅上昇していたものの、2023年には83.7%と微増でした。「内容を知っている」「内容をある程度知っている」人も2022年と同水準の53.8%に留まり、「SDGsの認知」としては、言葉の認知・内容の認知ともに、これ以上は大きく上昇しない水準に達したと言えそうです。
優先的に取り組むべきゴールの変化
次に、「SDGsで優先的に取り組むべきゴール」がこの3年間でどのように変化したのかを見てみます。図表2は、優先的に取り組むべきだと思う順に選択された3つのゴールを足し上げた結果です。2021年から継続して、「すべての人に健康と福祉を」「平和と公正をすべての人に」「気候変動に具体的な対策を」「貧困をなくそう」「人や国の不平等をなくそう」が上位5位に入っていて、上位となるゴールの顔ぶれ自体には変化は見られません。
ただし、順位の入れ替わりには、世相の影響が見られます。2022年首位だった「貧困をなくそう」は、2023年には4位に下がっています。長引くコロナ禍で経済活動の縮小に直面していた昨年に対して、2023年には感染対策と経済活動の両立が進み、「貧困問題」が相対的に意識されにくい状況となったのかもしれません。
また、2023年には「平和と公正をすべての人に」が、「すべての人に健康と福祉を」に続いて2位となりました。「平和と公正をすべての人に」はコロナ禍真っただ中だった2021年2月には1位でした。このときには、「現在世界が直面しているこのコロナ問題に対しては、自国の利益だけ考えて利己的な行動を取っていては解決できず、公正性が求められること」を反映しているのではないかと考察していました。一方、2023年に順位を上げたのは、「平和」を求める思いの表れと考えられます。昨年2月に始まったウクライナへの軍事侵攻は未だ続いていて、現地の被害状況や避難民の様子、経済やエネルギー面も含めたさまざまな戦争の影響が連日報道されています。戦争が終結し、平和が取り戻されることへの願いが反映された結果と言えるのではないでしょうか。
もう1点、2023年に注目したいのは「働きがいも 経済成長も」の伸びです。2021年・2022年は上位10位圏外だったのが、2023年には7位となりました。
物価上昇・生活費高騰が影響し「働きがいも 経済成長も」がランクイン
「働きがいも 経済成長も」への関心が高まった背景には何があるのでしょうか。生活者が関心を持つ社会課題・テーマと関連付けて見てみると、昨今の物価上昇・生活費高騰の影響が見てとれます。
物価高が生活を直撃する中、日本では20年以上にわたって賃金が伸び悩んでいる状況です。一部企業では賃上げの動きが見られるものの、経済がよくならないと生活も楽にならないという思いが、「働きがいも 経済成長も」への関心の高まりにつながっているのではないでしょうか。
ここ数年で、SDGsは広く認知されるようになりました。次の段階としては、どう行動に結びつけられるかが関心事となっていきそうです。インテージで実施したさまざまなサステナビリティに関する自主調査の結果から、「行動」に進む上では、時間やお金、心のゆとりや、自分へのメリットが感じられることが重要であることが示唆されています。サステナブル行動の推進においても、地球・環境や社会への良い影響だけでなく、生活者自身にどう良いのかも含めて考えていく必要がありそうです。
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■ニュース提供元:株式会社インテージ
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