
CO2排出量の少ない「LNG燃料フェリー」がエシカルな移動手段に!
移動手段として公共交通機関を使うことは、SDGsにつながる――特集記事で武蔵野大学の白井先生が語られていたように、多くの人がまとまって移動する公共交通機関は、マイカーでガソリンを消費するよりも、はるかにエシカルな行動です。
そうした中で株式会社商船三井さんふらわあは、日本初となるLNG燃料フェリー「さんふらわあ くれない・むらさき」の運航を2023年からスタートしています。
この「LNG燃料フェリー」は日本で導入されたばかりで聞き慣れないかと思いますが、LNG燃料を使用することで、従来の重油と比べてCO2の排出量を約25%削減。SOxは100%、NOxは約85%削減する、人にも環境にもやさしい乗り物として注目を集めています。
そこでこの「LNG燃料フェリー」をご紹介します。
LNG燃料って?どのように環境に良い?
LNG(LNG:Liquefied Natural Gas)燃料とは液化天然ガスのことで、天然ガスを-162℃まで冷却し液化させたものです。
液化すると体積が約600分の1になって大量貯蔵ができ、船舶などではより少ない体積で長距離を航行することが可能になります。
従来のフェリーの燃料である重油と比べて、燃焼時のCO₂(二酸化炭素)や、大気汚染の原因とされるNOx(窒素酸化物)の発生量が少なく、SOx(硫黄酸化物)が発生しない、環境にやさしいエネルギーとして注目されています。

そもそも大量輸送ができる「フェリー」そのものが環境にやさしかった!
とはいえ、どれくらい環境にやさしいのか、なかなかイメージがわかない方も多いかと思います。
そこで以下は海外(イギリス)の例ですが、二酸化炭素の排出量を乗り物別に比較したデータをご紹介します。
1kmあたりの移動による二酸化炭素の排出量
イギリス国内線飛行機:246g
ディーゼル車:171g
ガソリン車:170g
バイク:114g
バス(平均値):97g
バス(ロンドン市内):79g
電気自動車:47g
フェリー:19g
(出所:Hannah Ritchie著「Which form of transport has the smallest carbon footprint?」)
上記のフェリーは重油の一般的なフェリーなので単純な比較は難しいですが、LNG燃料フェリーはそこからさらにCO2排出量を約25%削減できる可能性があり、環境負荷を低減できると考えられます。
フェリーが貨物を運ぶことで、さらに運送業の環境負荷を軽減!
巨大な船であるフェリーは旅客だけでなく、同時に貨物も輸送することができます。
なんと「さんふらわあ くれない・むらさき」ではトラックの積載可能数が137台(13m換算)。
旅客とともに荷を積んだトラックも一緒に移動するので、陸路でトラックが移動するよりもはるかに燃料が節約できます。
この輸送方法の切り替えは「モーダルシフト」と呼ばれ、近年の運送業においても注目されています。
以下に「さんふらわあ くれない・むらさき」が運航する大阪市~別府市の比較を記します。
※データは参考値です。トラックの積載率や貨物の重量等で変動します。
※一般社団法人日本長距離フェリー協会サイト「CO2削減量計算」より算出。
《陸上輸送の場合》
●大阪市住之江区南港北2-1-10 →別府市汐見町944-2までの距離 642km
●10トントラック642kmの走行✕CO2排出原単位0.216kg
=CO2排出量1386.72kg
《海上輸送の場合》
●大阪市住之江区南港北2-1-10 →別府市汐見町944-2までの距離 425km
●海上輸送(フェリー航路)10トントラック425km移動✕CO2排出原単位0.043kg
=CO2排出量182.75kg
陸上輸送→海上輸送(重油燃料)にモーダルシフトすることで、CO2排出量が約86.82%の削減に。
さらに、LNG燃料で運航しているので、182.75㎏から25%の削減となり、CO2排出量は、137.06kg、つまり陸上輸送と比較し90.12%削減することになります。
これはつまり、陸路のトラック1台ぶんの排出量≒海上輸送トラック約10台ぶんの排出量ということになります。
さらには大阪市~別府市まで8時間以上トラックを運転するドライバーの労力なども軽減でき、運送業の働き方にも変革をもたらす可能性があります。
一般人はどうやってLNG燃料フェリーに乗れるの?
現状、LNG燃料フェリー「さんふらわあ くれない・むらさき」が就航しているのは大阪南港~大分県別府の便で、以下のサイトの予約フォームから区間で「大阪→別府」または「別府→大阪」を選ぶと乗ることができます。
https://www.ferry-sunflower.co.jp/
肝心の客室や、展望大浴場、レストランなどのパブリックスペースは以下のように高級ホテルクラスの設えでとても豪華!
陸路で行った場合、8時間も運転して疲れるよりは、ゆったり船の旅が満喫できて車のガソリンも使わない、優雅な旅を楽しむことができます。
船内では快適な客室で寝具も完備されており、長時間の移動でもリラックスした状態で過ごすことができます。また、展望大浴場では海を眺めながらリフレッシュでき、船旅ならではの非日常的な体験を味わうことができます。
船旅の魅力は、陸路では得られない海の広がりと開放感です。デッキから眺める夕日や星空は格別で、自然の美しさに心が癒されます。また、船内では様々なエンターテインメントも楽しめ、旅行がより一層充実したものになります。
大阪~別府間の船旅は、移動手段としてだけでなく、旅そのものが目的となる贅沢な体験となることでしょう。
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スイート和洋室コネクト(定員2~4名[ベッド2名・布団2名]
バルコニー・バス・トイレ付 窓あり) -
デラックス洋室(定員2~3名 シャワー・トイレ付 窓あり)
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レストラン(ビュッフェ会場) -
女性用展望大浴場(無料)
バリアフリー、ユニバーサルデザインにも配慮
「さんふらわあ くれない・むらさき」は、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団から助成を受け、客室をはじめ船内のさまざまなエリアにバリアフリー設備を設けているとのこと。
SDGsの大事な理念のひとつ「誰一人取り残さない」にも当てはまるような、様々な配慮がなされています。
2024年3月22日には「国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰」を受賞。この取り組みは高く評価されています。
●バリアフリー対応の客室の用意
「スイートバリアフリー」は、入浴介助ができる広いバスルーム、手すりやシャワーチェアなども備え、車椅子からベッドへの移動がしやすいよう、高さの低いベッドが備えられています。
「プライベートツイン」「プライベートシングル・ツイン」「グループ和室」も、一部の客室をバリアフリー(車椅子対応)仕様に。
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スイートバリアフリー -
バリアフリールーム(自動開閉ドア)
バリアフリー対応の部屋はエレベーターから近い場所に位置し、移動も便利です。またパブリックスペースには段差がなく、スムーズに移動できます。
●「別府港さんふらわあターミナル」は、計画段階から障がい者団体からの意見を取り入れて新設
車椅子利用者のために、ターミナルの駐車場から「さんふらわあ」まで、車椅子から降りずに移動できるように設計されています。
また車椅子だけでなく、様々な人々に配慮した設備や構造により、施設全体にユニバーサルデザインが採用されています。
・エレベーターは4基すべてが車椅子に対応。
・カウンターの高さが低めに設計された発券カウンター(バリアフリー窓口)。筆談にも対応。
・発達障がいや自閉症を持つ人などがパニックや興奮状態になった際、落ち着くための遮音性を備えた「カームダウン/クールダウン室」を用意。
・ムスリム(イスラム教徒)の方などが礼拝を行う祈祷室を用意。宗教や宗派を問わず利用可能。
・「さんふらわあ」は盲導犬、聴導犬、介助犬との同伴乗船が可能で、それに合わせてターミナルには補助犬用トイレを用意。
・おむつ交換台やベビーベッド、扉付きの授乳スペースを設けた「ベビーケアルーム」を用意。
など。
多様性のある社会に向けて、より快適な設備を整えています。
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車椅子の高さに対応した発券カウンター。 -
補助犬用トイレ。
LNG燃料フェリーの今後は?
現状、LNG燃料フェリーが運航されているのは大阪南港~別府の区間のみなので、利用できる人は限られているかと思います。
そこで「商船三井さんふらわあ」の方に聞いたところ、2025年就航に向けて、大洗港(茨城県大洗)~苫小牧港(北海道苫小牧)区間でLNG燃料フェリーの新造を進めているとのこと。
「今後もお客様や社会の環境負荷低減のニーズに応え、低・脱炭素化社会の実現に貢献していきます」と「商船三井さんふらわあ」の担当者は語っています。
長距離移動といえば飛行機や新幹線がまず頭に浮かびますが、区間は限られるものの、フェリーのゆったりとした旅も楽しいものです。
さらにその移動手段は、重油を使っていたフェリーよりも、LNG燃料フェリーはさらにエシカルになります。
長旅に、ぜひLNG燃料フェリーの利用も検討してみてはいかがでしょうか。
《LNG燃料フェリー「さんふらわあ くれない・むらさき」の詳細、運賃検索はこちら》
https://www.ferry-sunflower.co.jp/lp/newship/kurenai_murasaki/
SDGsはもちろんのこと、サステナブル・エシカルな視点から記事を制作する編集者・ライターの専門チームです。社会課題から身近にできることまで幅広く取り上げ、分かりやすくお伝えします。
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