ゴミ問題の今と未来。このままだと街は、地球はどうなる?!
毎日のように出てくるゴミ。
ですが、ゴミを出した後、そのゴミがどうなっているのかを考えたことはありますか?燃えるゴミの日と燃えないゴミの日があるなーぐらいの感覚でしょうか?
今回はM-1グランプリで準決勝進出の実績があるお笑い芸人であり、ゴミ清掃員としても働くマシンガンズの滝沢様にお話を伺いました。
【Profile】滝沢 秀一(たきざわ しゅういち)さん
お笑い芸人/ゴミ清掃員。
1976年生まれ。1998年にお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。その後2012年に芸人のままゴミ収集会社に就職。お笑い芸人とゴミ清掃員の二つの顔を持ちながら活動をしている。現在はゴミ清掃員としてゴミ学を世間に伝えたり、エッセイ『このゴミは収集できません』(白夜書房)など、いくつもの本も出版している。
「ゴミのことを知らない」からゴミが増える?!
――私たちの今の暮らしの問題点は何だと思われますか?
何も知らないこと、それに尽きるのではないでしょうか。
僕がゴミ清掃員になったのは11年前ですが、なりたいからなったわけではなく、お金の問題で芸人以外の仕事をしなくてはいけない状況だからゴミ清掃員になりました。つまり、この職業につくまでは、ゴミの問題も環境の問題も理解はなくゴミの知識はゼロだったわけです。
当時一番衝撃を受けたのはゴミの量。各家庭から出るゴミの量しか知りませんでしたが、街から出るゴミを回収していると、驚くぐらいの量です。清掃車で最大つめられる量は2トン(ゴミ袋900個分)。これが1台で1日6回満杯になります。清掃工場からは、僕が乗っている清掃車以外にも10台~20台あるので、1日の回収で、どれだけのゴミが出ているかは、もうわかりますね?
これが、地域だけではなく、各市町村、都道府県と考えてみると、とんでもない量のゴミがあることがわかっていただけるかと思います。
よく人は、「ゴミは燃やせばいい」「本気を出せばなんでも燃やせる」って言いますが、ゴミを燃やしても、ゴミは消えたりしません。灰が残ります。この灰は、最終処分場と言われるところに埋めるのですが、それが問題です。
実は日本の最終処分場は、終わりが見えています。新しい最終処分場はできません。この最終処分場が満杯になったらどうなるのかというと、日本ではもうゴミが捨てられなくなるんです。そんな未来を考えたことのある人って、どれだけいるでしょうか?
日本の最終処分場の寿命は22.4年。環境庁のホームページにも書かれています。つまり22.4年後には、日本ではゴミを捨てられなくなります。
――22年ってあっという間にきますよね?
そうです。僕の子どもは10歳ですから、32歳になる頃にはゴミを捨てられなくなります。
このことを、日本に住んでいる方はどれだけ知っているんだろうということ。そして、それを知った後で、どういう行動を取るのかなということが気になっています。
僕は個人的に、ゴミを減らさないといけないんじゃないかなと思って、SNSやTwitterでゴミを減らそうという発信はしていますが、なかなか理解にまでは至っていないように感じていますね。
――ゴミを捨てられなくなった後の策はもうあるのでしょうか?
ありません。今は灰をいかに減らすかということに力を入れていて、灰も一部はリサイクルをしています。ですが、そういった施策をしても22.4年で最終処分場は一杯になってしまうということがわかっています。
みんなが当たり前に買っては捨て、買っては捨てを繰り返しています。ですがこれは、みんなが悪いのではなくて、知らないからこういうことをしているんだと感じています。
僕はゴミ清掃員として働いていると、これって「ゴミなのかな?」と思うこともたくさんありますね。
ゴミって、何種類に分けられるって思う?という質問を、僕はよく小学生に聞くんです。すると7、8種類ぐらいっていう声が多く、たまに25種類と答える子もいます。ですが、ゴミは2種類しかありません。可燃ごみと不燃ごみのみです。
じゃあ、ペットボトルとか瓶、缶は何なのかというと、あれは僕らの世界では「ゴミ」とは言いません。資源です。みんなは「資源ごみ」というかもしれませんが、リサイクルができる「資源」。
先ほど言っていた最終処分場に捨てる灰は、資源以外のものを燃やしてできた灰です。
だからまずは、ゴミと資源の区別をつけることが大事なのではないかと僕は思っています。
何十年も前から「ゴミを減らそう」として、なかなか減らない現実
――ゴミに対して今までと同じ意識で過ごしているとどうなると思いますか?
実はこの間、1954年の資料を読んだんです。そこには、「数あれど、まだまだこの中に使えるものはあるはず」と書かれていました。つまり、70年前から、ゴミを減らそうよと言っている人がいたということです。
ですが、みんなの意識は変わらず、70年が過ぎた今、またゴミを減らそうよと僕が言っているわけです。なので、みんなの意識が変わらなければ、また70年後に僕のような人が「ゴミを減らそうよ」と言っているのではないかと思います。
ゴミを減らすというのは、意識をするだけで簡単にできることもあります。意識づけをするだけでも、ゴミは減っていくのではないでしょうか。
――70年前にも、「ゴミを減らそうよ」と言っていた方がいたということは、その方も危機感を覚えていたということですか?
そうです。今日、この日が来ることはわかっていたんです。
――先ほどおっしゃっていた最終処分場はいつからあるのでしょうか?
江戸時代からは記録が残っていますね。
埋立地と言われている場所は、最終処分場だった場所です。昔海だった場所を最終処分場として使っていましたが、今以上には場所を増やすことができないので、今使っている最終処分場が満杯になる時、東京ではゴミが出せなくなることを意味しています。そしてそれは、私たちが生きている間に起こることです。
みんながゴミを減らせば大きな力になる
――未来を変えるために、何から行えばいいと思われますか?
小さなことでもいいので、ゴミについて考えてほしいと思います。そういった意識を持っている方はまだまだ少ないと思うので。
例えばペットボトル。ペットボトルはゴミではなく資源なのですが、何でもかんでもペットボトルに頼りすぎているように思っています。調味料や飲料水にペットボトルは使われていますよね。
例えば、自販機の隣にリサイクルボックスがあって、それが満杯だった場合、リサイクルボックスの横や下にペットボトルを置いたりしませんか?最終的には、どこかの誰かが何とかしてくれると思っているからそうしているんですよね。
ですがペットボトルは軽いので、風で簡単に飛ばされてしまいます。その結果、車に踏まれたペットボトルができるわけです。道を歩いていると、見かけたこともあるのではないでしょうか?また、車に踏まれなくても、近くに川があれば川に流れて、それが最終的には海に流されて環境問題につながっています。回収されていないペットボトルのうち、0.1%が川に流れていると計算すると、少なく見積もっても1年間で180万本になると言われています。故意にやっているわけではないのに。
だから単純に、マイボトルにするのはいいと僕は思っています。1日1本飲まなかったとすると、1年間で365本使わないことになります。これはちりつもではあるんですが、10人が行えば3650本。100人が行えば36500本。1年間で3万本ぐらい省略できるんです。これって相当な数だと思いませんか?
これと同じで、何かを買おうと思った時に「あ、これって家のあれで代用できるかも」と思って買わなければ、それがゴミになることがなくなるので、ゴミが減ります。これを100人が行うだけでも、ゴミの量は大きく減らすことができます。難しいことではなく、本当にちょっとしたことで、ゴミは減らせるんです。
――最近変わったことといえばレジ袋も有料になりましたよね
あれも「あんなもん失くしてどうするんだ。大してプラスチック削減なんてできていないじゃないか」と言っている方もいらっしゃいますけど、ゴミ清掃員として働いていると、ちゃんとその意味を感じています。なぜなら、レジ袋が有料になってからは木に引っかかっているレジ袋を見かけなくなりましたから。
僕は物には価値を与えないといけないと思っています。タダでもらえるものは、大体捨てられるものですから。必要なものを買うだけの時代になれば、ゴミは自然と減っていくと思っています。
――ありがとうございました。次回は実際にみんなで行動しよう!ということで実践編をお届けします。みんなもきっと気になる、簡単にできるゴミ処理方法を滝沢さんにお伺いします。
SDGsはもちろんのこと、サステナブル・エシカルな視点から記事を制作する編集者・ライターの専門チームです。社会課題から身近にできることまで幅広く取り上げ、分かりやすくお伝えします。
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