食欲の秋、読書の秋に心がけたいゴミ事情
「秋ならではのゴミ」があるのか、気になりませんか?
今回は、何年もゴミ清掃員として働いている滝沢さんだからわかる、秋のゴミ事情についてお話を伺いました。
【Profile】滝沢 秀一(たきざわ しゅういち)さん
お笑い芸人/ゴミ清掃員。
1976年生まれ。1998年にお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。その後2012年に芸人のままゴミ収集会社に就職。お笑い芸人とゴミ清掃員の二つの顔を持ちながら活動をしている。現在はゴミ清掃員としてゴミ学を世間に伝えたり、エッセイ『このゴミは収集できません』(白夜書房)など、いくつもの本も出版している。
秋の定番といえば?
――食欲の秋、読書の秋ということで秋にまつわるゴミについてお伺いしたいと思います。古米が捨てられていることが多いと聞きますが、実際にそうなのですか?
一般の方には、あまり知られていないことかもしれません。ゴミを捨てるのは個人的な行為ですし、誰かに相談をするわけでもないので、他人が何をどんなふうに捨てているのかを知らない人がほとんどではないでしょうか。
ただ清掃員は、家庭から出てくるゴミを何万と見てきているので、秋になるとお米が多く捨てられているというのは、よく見かけることですね。
――古米でもまだ食べられますよね……
おっしゃる通りで、僕も食べようと思えば食べられるのになーと思いながら、回収車の回転盤のボタンを押しています。食べられるお米がゴミになる瞬間を見ているので、心が痛みますね。
『ゴミ清掃員の日常』
・最近、可燃ゴミでお米が捨てられているのを見る。古米だろうか?新米が入ったから捨てたのだったら、何ともったいないことか。僕にくれたらいいのに……。#ゴミ清掃員の日常 #このゴミは収集できません
— マシンガンズ滝沢 (@takizawa0914) November 22, 2018
――古米を捨てているのは、一般家庭の方なのでしょうか?
一般家庭の方ですね。断捨離でお米が入ったまま箱ごと捨てることもありますし、粗大ごみでお米の分量を量る入れ物にお米が入ったまま捨てられていることもあります。
お米は、お金を出せば買える時代ですので、そこまで大事にされていないように見えますね。
――「実家からお米が送られてきて、食べ終える前にお米がまた送られてきたから、古い米は捨てる」ということもあるかもしれませんね。
あるかもしれません。親が子どもに仕送りをする際、段ボールの中にお米やラーメン、野菜も入れてに送ることもあるでしょうし。
でも一人暮らしの子どもは、そもそもお米を食べない場合もありますから、その場合はお米はそのまま捨てられるのかもしれません。
古米が捨てられてしまう理由は、本当のところはわからないですが、原因は色々とありそうですね。
――他にも秋に捨てられているものはありますか?
いがぐりですね。剥いた後のいがぐりが大量に出されたりするのですが、いがぐりはゴミ袋を突き破ることが多いので危険です。僕が回収をしに行くことが多い世田谷区でもありますし。
以前は、90リットルの袋の中にいがぐりの皮がパンパンに入っていたこともありましたね。
他には、柿やラフランスのような秋のフルーツも増えます。あとは、保冷剤でしょうか。
保冷剤は、夏にお店で貰うことが多いものの、秋になると「こんなに要らない」と捨てられるのだと思いますね。
お中元やもらい物のゴミ
――秋だと、お中元でもらったものを捨てられていることもありますか?
ありますよ。お中元、お歳暮はゴミが増えるシーズンでもあります。
高級メロンが、そのまま三つ捨てられていることもありますし、高級ゼリーや何かのセット、包装紙さえはがされていないものがそのままの状態で捨てられていることもあります。
送る人は去年と同じものを送ればいいと思っていても、貰う人はもう飽きて要らなかったり、元々好きではないのかもしれません。
ですが、形式上「贈らなければいけない」「貰わなければいけない」とやり取りが続いているケースもあるのではないでしょうか。
――昔はおすそ分けという文化もありましたが、現在はあまりしなくなっていると思いますか?
そうですね。僕の場合を当てはめてもそうですが、隣にどういう人が住んでいるのかもわからないですからね。近所づきあいも希薄になっていますし。
ただ僕の場合は後輩芸人がいるので、後輩芸人におすそ分けをしたりしていますよ。
贈り物やまだ食べられるのにそのまま捨てられてしまうのは、「顔の見えにくい社会」が問題だと思っています。
お米の話に戻ると、僕のおじいちゃんおばあちゃんは新潟で農家をしていました。ですので、お米を作る苦労も知っています。
自分ではなくても、他の方がお米を捨てているのを見ると、おじいちゃんおばあちゃんの悲しそうな表情が頭に浮かぶので、僕自身は本当に悲しくなります。
ですが多くの人が、お米を誰がどこでどうやって作っているのか知りません。だからこそ、簡単に捨てられてしまいますし、隣近所に誰が住んでいるのかもわからないのでおすそ分けもできず、ゴミに繋がるのかなと思っていますね。
――もらい物が捨てられている量は、年々増えていますか?
そんなには変わりません。ただ、ふるさと納税の返礼品が、そのまま捨てられているのを見かけることが増えました。
ふるさと納税は、「税金を払うのが嫌で、それだったら何かを貰いたい」という気持ちで行っている人もいると思います。
ですが「とりあえず」貰っているだけなので、「食べなきゃ捨てればいいや」と軽い気持ちの人もいるのではないでしょうか。
思っていたものと違うから、捨てるということもあると思いますね。
――飲料系のものも捨てられていたりしますか?
定期的に購入しているものは、捨てられているのをよく見かけます。だんだん飽きてくるのだと思いますし、飲み切る前に次のものが来て、ということを繰り返しているうちに家に溜まり、まとめて捨てるということもあるのではないでしょうか。
読書の秋だからこそ出てしまうゴミ
――秋は読書の秋とも言われていますが、読み終えた本を可燃ゴミの日に出す方も多いのでしょうか?
多いです。資源の日に出すのが面倒だから、可燃ゴミの日に出される方が一定数います。ただ、ルール違反ではないので、回収はしていますね。
――反対に、資源の日に出せない本もあったりしますか?
基本的にはありません。ただし細かい話をすると、あることにはあります。
黒い装丁をしている本は、リサイクルした時に黒い点が出てしまうので問題だったり。
ですが、基本的には問題ありませんので、古紙の日に出して頂けたらと思います。
――ハードカバーの本は、プラスチックでできていることもありますよね?
そうですね。パンプレットとかもそうですし、教科書もそうです。
――それも本当は、外してから出す方がいいのでしょうか?
外した方がいいですが、そこまで言うとみなさん大変ですよね。
古紙の日に出しづらくなってしまう方が問題だと思うので、本、雑誌、教科書などはそのまま出して頂ければと問題ありません。
分離機でプラスチック部分ははがれると思いますので。
――前に取材で、滝沢さんは読書が趣味だとおっしゃられていたのですが、読み終えた本はどうされているのでしょうか?
僕の場合は会社に持って行きますね。
僕は太田プロに所属していますが、太田プロは社内に「いらないものコーナー」というのがあります。
そこにいらないものを置いたり、気になるものがあれば自由に持って行ったりしています。僕も本をそこに置くことがありますし、そこから本を持っていくこともあります。
他の企業でも、「いらないものコーナー」を作ると、捨てられるものが減るのではないかと思いますね。
――清掃員をしていて、他にも本にまつわることで気づいたことはありますか?
そうですね。最近は、百科事典を出されているところをよく見かけます。おそらくですが、Googleに負けているのではないでしょうか。
Googleは検索すれば出てきますし、百科事典は家に置いておくとかさばるので、邪魔なのだと思います。
他には古い書物もよく見かけますね。生前整理なのかもしれません。
時代の流れで、増えてくるものもあるんだなと感じています。
――秋にまつわるゴミ事情のお話、今日もありがとうございました。
―― 書籍/活動紹介 ――
SDGsはもちろんのこと、サステナブル・エシカルな視点から記事を制作する編集者・ライターの専門チームです。社会課題から身近にできることまで幅広く取り上げ、分かりやすくお伝えします。
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