もっと減らせる!ゴミ処理テクニック《上級編》
ゴミ清掃員としても働くお笑い芸人マシンガンズの滝沢さんに、ゴミについてお話を聞いていく本企画。
第3回目は「もっとゴミを減らしたい!」とやる気を出してくれた方へぜひ読んでいただきたい、ゴミ処理テクニック《上級編》です。
前回に引き続き、家庭で実践できる方法について語っていただきました。
【Profile】滝沢 秀一(たきざわ しゅういち)さん
お笑い芸人/ゴミ清掃員。
1976年生まれ。1998年にお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。その後2012年に芸人のままゴミ収集会社に就職。お笑い芸人とゴミ清掃員の二つの顔を持ちながら活動をしている。現在はゴミ清掃員としてゴミ学を世間に伝えたり、エッセイ『このゴミは収集できません』(白夜書房)など、いくつもの本も出版している。
「ゴミを完全に消す」方法がある!
――一般家庭でもできる本格的なゴミ処理法を教えてください
コンポストをお勧めします。
前回、紙とプラスチックを分別しましょうという話をさせていただきましたが、紙とプラスチックを分別することで、ゴミの三分の一は減ります。となると、残りは三分の二ですね。どこの自治体のデータを見ても、大体可燃ごみの40%が食べ残しや野菜のヘタなどの食べ物に関するゴミです。
そこで、この食べ物系のゴミを何とかしようということで、僕がお勧めしているのがコンポストです。コンポストというのは、バクテリアがごみを分解してくれるものです。このコンポストをするには、ホームセンターで700円ぐらいのプランターと黒土14リットルで210円ぐらいのものを購入すれば終わりです。僕の家はマンションですが、マンションでもコンポストはできます。
使用方法は、黒土の中に食べ残したものや野菜のヘタなどを入れておくだけ。そうすればバクテリアが、それらを食べて、この世から消してくれます。
僕は清掃員になる前まで、4人家族で週二回の可燃ゴミの日に、一回当たり2~3袋のゴミを出していました。週に換算すると最大6袋ですね。それが今では、45リットルの袋を週に1回出すだけになっています。
洋服を買わないとか、余計なものを買わないようにもしていますが、仕事柄洋服を持っていないと行けなかったので、以前は買っていました。ですが今はレンタル洋服に変えていて、上三着、下一着をコーディネーターさんが選んだ服が家に届きます。そして一か月たったら返すんです。今まで洋服で埋まっていたスペースも、開くので気持ちも良いです。
洋服がたまらないので、断捨離をする必要もなくなりますからね。
他にも、てんぷら油がありますよね。僕の家では、子どもが唐揚げが好きなので、時々作っているんですが、てんぷら油は意外とゴミになります。固めるテンプルを使ってはいますが、かさばります。なので、そのてんぷら油の中に、シュレッターにかけた紙を、中に入れてから固めるテンプルを入れて、固めるんです。そしてそれをちょうどいい大きさに切れば、固定燃料になります。
シュレッターにかけた紙は、古紙の日に出せず、可燃ゴミにしかならないので、これも資源に帰ることができます。
固定燃料はキャンプで使うことができますし、非常事態のために家に置いておくこともできるので、とても便利です。
――コンポストのお話に戻るのですが、黒土に埋めた生ごみはどれくらいの期間でなくなるのでしょうか?
バクテリアは生き物ですので、夏は活発的に動きますが、冬は寒いので動きが鈍いところがあります。夏ですと、4、5日で生ゴミが消えますが、冬は一週間ぐらいかかります。また、何を埋めるのかによっても、消えるスピードは違います。バクテリアは人間に似ているので、唐揚げのころもはすぐに食べてしまいますが、みかんの皮などはゆっくりしか食べません。
ですので、無農薬のみかんの皮だったら、皮を乾かして切って僕たちで食べることもありますよ。
――コンポストで生ゴミがなくなっていない時に、追加しても大丈夫なのでしょうか?
そこは各々自由にしてもらっていいところです。ただ、一つ注意があるとすると、冬は問題ありませんが、夏は土の上に生ゴミが少しでも出ているとコバエが発生したりするので、土を完全にかぶせる必要はありますね。
あとは、土を定期的にかき混ぜることです。
土をかき混ぜることで、生ゴミの匂いは出てこなくなりますし、空気を土の中に入れることで、活発になるバクテリアもいるので、かき混ぜることは大事なことです。
「ゴミにしかならない」ものの処理方法
――SNSなどでもゴミ処理についての方法を書かれていますが反響が多かったのはどういった内容ですか?
ゴマ油が入れられているペットボトルの処理の方法でしょうか。
ペットボトルなので、プラとして資源の日に出されている方もいるのですが、油が入った時点でプラとして出すことはできません。ノンオイルであればいいのですが、オイルのドレッシングも同じくプラとして出すことはできません。ペットボトルの中を洗ってもダメなので、僕の住んでいる地域だと可燃ゴミの日に捨てています。
ただ、捨てるだけではもったいないということで、僕はその中に竹串を入れています。焼き鳥を食べると出てきますよね。あの竹串は、結構危険なんです。ゴミ清掃員が竹串で怪我をするということはよくある話で、実際に僕もありました。
だから竹串をペットボトルの中に入れて捨てると良いですよ、とTwitterで流したら、みなさん喜んでいましたね。
油の入っていたPETはペットボトル資源には出せません。おはようございます。ゴミ清掃員の滝沢です。油が入っていたものは油がしみてしまうので、リサイクルとしては適していません。なので僕はどうせ捨てるなら、と竹串入れにしています。こうすれば清掃員に刺さらないです。#ゴミ清掃員の日常 pic.twitter.com/8Zr8yUpQeq
— マシンガンズ滝沢 (@takizawa0914) October 17, 2022
――他にも危ないものもあったりするんですか?
アイスピックがゴミ袋から飛び出していたりとか、包丁が入っていたりとかすることもあります。
誰が回収をしているのかを考えていないので、そういうことをしてしまうのだと思います。
――回収車が爆発したという話も聞いたりしますが…
スプレー缶ですね。使いかけのスプレー缶も、可燃ゴミだったらいいと思っていれる人もたくさんいます。回収車はゴミを圧縮しながら進んでいるので、ガスがだんだんと充満したり、冬だと静電気で引火したという例もあります。
一番危険なのは、不燃ゴミです。ライターも一緒に捨てられていたりするので、不燃ごみの車が一番燃えやすいという特徴があります。
最近で言うと、リチウムイオン電池が問題になっています。これは充電をすればまた使えるという電池です。どういったものに使われているかというと、この冬もよく捨てられていた、携帯扇風機や電子タバコ、モバイルバッテリー、携帯、パソコン、ワイヤレスイヤホンなどです。
リチウムイオン電池は世紀の発明なのですが、圧縮に弱いという問題があります。圧縮すると、火を噴く性質です。そのため、その場ですぐに火を噴くなら僕たちも対処できるのですが、回収車の奥にある状態で火を噴いてしまうと、対処ができません。
当たり前のように携帯扇風機を買ったりしていますが、捨てることができないものだったりします。
リチウムイオン電池は、ここ近年開発されたばかりのものなので、回収方法もまだ確立されていません。地域によっては、不燃ごみで出してもいいよと言っているところもあれば、絶対に出さないでと言っているところもあります。そうなると、量販店に持っていくしかありません。
物を買う時には、これをどうやって捨てるのかということを考えることも大事です。
みんなでゴミ友だちを作ろう!
――ゴミ処理をすることが楽しくなる秘訣やモチベーションをあげる方法を教えて下さい
ゴミ友だちを作るのはどうでしょうか?
一人でゴミの分別をやって、知識を叩き込んで、パンフレットにはどう書かれているのかを考えていると、ストレスになると思います。
僕は知っている人たちとゴミの話を共通してできる人のことを、「ゴミ友だち」と呼んでいますが、そういう人たちと、「これってこういう風に捨てるといいわよ」「あら、知らなかったわ。じゃあ、こういう捨て方って知ってる?」「知らなかったわ」なんて、お互いに共有することが大切だと思っています
僕は色んなことを客観的に見ているのですが、一人で熱心にゴミの分別をされている方はとても詳しいんですよ。ただ、自分が何も知らなかった時代のことを忘れてしまっているので、知らない人をバカにするような場面もあったりします。
だから僕は、一人の人が100歩進むよりも、100人の人が一歩進む方が、環境問題は進むと思っています。自分の知ったことを共有したり、仲間を作ったり、顔の見える社会で繋がっていくことが大切です。
ゴミを減らすこととか、食品ロスをなくすこととかにもつながるのですが、地産地消って大事だと思います。地産地消は、地域の農家さんを応援しようという部分もありますが、誰が作ったのかを知ることで、この人が作ったものだから、ちゃんと食べようと考えることが大事です。
ゴミの分別に対してモチベーションを上げるのは、一人で頑張るには限界があります。だから環境問題に取り組むのであれば、一番初めにすることは仲間を見つけることではないでしょうか。
学生さんから、「環境問題に興味があるんですけど何から始めたらいいですか?」と聞かれたら、僕はいつも「仲間をみつけなさい」と伝えています。周りの人を巻き込んで、仲間同士のコミュニティーをたくさん作っていくんです。そして、どこかでそのコミュニティー同士も一つの輪になっていけば、大きな力になると考えています。
だから是非皆さんも、「ゴミ友だち」を作ってみてくださいね。
SDGsはもちろんのこと、サステナブル・エシカルな視点から記事を制作する編集者・ライターの専門チームです。社会課題から身近にできることまで幅広く取り上げ、分かりやすくお伝えします。
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