きっかけはゴミの師匠からのアドバイス⁉️マシンガンズ滝沢さんとSDGs
これまで滝沢さんにゴミに関することを中心にお話しを聞いてきましたが、ここで改めて滝沢さんに、ゴミのことだけではない「SDGs」について伺いました。
【Profile】滝沢 秀一(たきざわ しゅういち)さん
お笑い芸人/ゴミ清掃員。
1976年生まれ。1998年にお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。その後2012年に芸人のままゴミ収集会社に就職。お笑い芸人とゴミ清掃員の二つの顔を持ちながら活動をしている。現在はゴミ清掃員としてゴミ学を世間に伝えたり、エッセイ『このゴミは収集できません』(白夜書房)など、いくつもの本も出版している。
教育で、人の行動は変わる
――SDGsの目標1~17で、滝沢さんが着目しているものはありますか?
SDGsは、それぞれの目標が絡み合っているため、全て大事だとは思います。ですが、あえて言うなら私は4番の教育が一番大切だと思っています。
教育を目標にしたとしても、すぐに変わるものではありません。ですが、今から始めることによって、5年後、10年後の未来は変わってきます。
実際にSDGsを子どもたちに教えようと、日本でも言い始めたのが5、6年前です。その結果、現代の子どもたちにとって、SDGsは当たり前になっています。
例えば最近あった話で言うと、スーパーに行ったら20歳ぐらいの子が、手前から商品を取ってカゴに入れました。私は気になって、どうして手前から取ったのかを聞いたところ、その子は「手前から取るって習ったから」と言いました。
ですが、私たちの世代ですと、親から「商品は後ろから取りなさい」と言われましたよね。
こういった教育の違いで、人の行動は変わります。
また、現在の日本には外国の方が大勢います。そうした中で問題視されている1つが、ゴミのポイ捨てです。
しかしこれも、文化の違いです。
日本ではゴミに対する教育があるため、捨て方をある程度知っています。
ですが、外国ではゴミの分別がそもそもないところもあるため、「分別をしなければいけない」という知識がないだけです。
生活習慣の違いで例を挙げると、インドの風習があります。
インドではチャイを陶器のカップに入れて飲むのですが、飲み終えたら地面にたたきつけるようにしてカップを割ります。なぜカップを洗わずに、こういう事をするかというと、カップを洗う水の資源がもったいないからです。陶器は割ってしまえば、いずれ土に戻るので、水を使わないために、こういった行動を取っています。
これが生活習慣になっているため、日本に来てもペットボトルの飲料水を飲んだ後で、地面にたたきつけてしまうことがあるようですが、悪気があって行っていることではありません。
生活習慣が違うから、そうしてしまうだけです。
そうしたことからも、ゴミに対する世界共通の環境認識を持つことができれば、世界は変わっていくのではないかと、私は思います。
次に注目しているのは貧困の問題なのですが、これも勉強ができるようになると、貧困から抜け出せるようになりますので、やはり一番は教育の問題を変えていきたいと思います。
SDGsのイベントに参加して気付いたこと
――滝沢さんご自身、これまでSDGs関連のイベントに参加されたり、主催されたりしているかと思いますが、印象に残っていることはありますか?
大人よりも子どもの方が意識が高いように感じたことです。
今の小学四年生は、小学校の近くにある清掃工場に授業の一環で見学に親と一緒に行きます。その時に、私が分別クイズを出すと、手を挙げて答えてくれる子が多くいます。
ですが、親の方はといえば、私が話していることに「へーそうだったんだ」というふうに言っていたりするので、大人の方が危機感を持った方がいいのかなと思いました。
――一般の方たちは、どういう気持ちでSDGsのイベントに参加されているように見えましたか?SDGsを知ろうという強い気持ちがあって、参加しているのでしょうか。
どうでしょうか。
ただ私は、SDGsだと言って、世間が盛り上がる状況は不自然だと思っています。
そうではなく、楽しそうな催しがあるからと思って出向いてみたら、そこではSDGsについての学びもあった、という流れの方が自然だと思います。
イベントが面白そうだから、お祭りだから、ショーで誰かが出るから行こうとか、エンターテインメントの要素が重要です。
SDGsがあるから行きたいという子どもがいたら、少し違和感を覚えないですか?
SDGsだから来ているのではないという状況が、私は普通だと思います。ただ、他の要素に惹かれて行った結果、それがきっかけでSDGsを知るという事が大切だと思っています。
――SDGs関連のイベントに参加をしてみて、よかったと思ったものはありますか?
もちろんあります。イベントに力を入れているところも沢山ありますので。
一つ例を出すとしたら、テレビ番組での話になるのですが、徳島県にある上勝町という町では、45種類に分別しているところがあり、その町の責任者がお祭りに行って分別をするという企画がありました。
屋台にあるホットドッグ屋さんに行って、食べて、それをどう分別するのかというのをモニタリングするもので、とてもためになりました。
私もそれをヒントに、滝沢ゴミクラブを作りました。
滝沢ゴミクラブには、リーダーシップを取ってくれる人がいるのですが、その人も実際のお祭りに行ってゴミの分別をしました。
通常のお祭りのゴミの処理は、分別しなければ40万円ほどかかってしまいます。しかし、分別をすることで、4万円の収益を出しました。
分別をすることで、マイナスをプラスに変えるというのは、とても面白いと思いませんか?
人は利益がなければ動かないものでもいいと思います。
こうやって利益が生み出せるという事を示すことによって、分別への関心も高まっていってもらえると嬉しいですね。
滝沢さんとSDGsとの出会い
――滝沢さんが初めてSDGsと関わったのはいつ頃ですか?
2018年です。
私にはゴミの師匠がいるのですが、ゴミの本を出した後に、その方に次はどういう勉強をすればいいでしょうか、と聞いたところ、「次はSDGsを勉強した方が良いよ」と言われました。当時の私はSDGsを知らなかったため、「何だろう?」と思って調べたのがきっかけです。
2018年にはすでにゴミ清掃員をしていましたが、この業界でもまだSDGsが浸透していなかった、ということです。
――ゴミの師匠は、清掃会社の方ですか?
いいえ。
イベントで繋がって知り合った、一企業の方です。
今もその会社からzoomでお話させてもらっています。いつも本当にお世話になっていて、色々と教えてもらっています。
――SDGsのことを知って、滝沢さんご自身も認識が変わりましたか?
変わりました。
SDGsで何ができるのかと考えた時に、私はゴミ清掃員だったのでゴミの問題だと思いました。ゴミを減らすための活動をしたい、そのためにはどうすればいいのかと、考えるようになりましたね。
――これから先、SDGsでやってみたいことはありますか?
色々あります。
私は社団法人をやっています。この団体は教育をメインに活動をしているものです。
例えば、幼稚園の子どもたちに、紙芝居を使って分別のことを教えるということをしています。環境推進国であるスウェーデンが、保育園児の時から、分別を教えていると聞いたからです。
私の考えとして楽しい教育がしたいので、分別の紙芝居ではキャラクターを使っています。
社団法人のもう一つの側面は、教える人への教育です。
私は全国で講演会をしていますが、一人では手が足りません。2030年という事を考えると、残り5、6年です。その短期間で、私一人で背負えるかというと、背負えません。
ですから、私と同じことを教えられる人を育てたいと思っています。
細かいところで言うと、もっとゴミが減る活動はないのか、という事は常に考えています。
日本のゴミを減らすには、地域のゴミを減らさないといけません。その地域のゴミを減らすためには、個人のゴミを減らさないといけません。
個人のゴミにも焦点を当てていきたいと思い、SNSなどで呼びかけはしていますが、大枠としては日本のゴミを減らしたい、というのが私の目標です。
―― 書籍/活動紹介 ――
SDGsはもちろんのこと、サステナブル・エシカルな視点から記事を制作する編集者・ライターの専門チームです。社会課題から身近にできることまで幅広く取り上げ、分かりやすくお伝えします。
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