79年前の惨劇を語り継ぎ、平和について考える「吉田空襲展」レポート
7月28日・30日・31日の3日間にわたり、山梨県富士吉田市で「吉田空襲展」が開催されました。 吉田空襲展は1945年7月30日に富士吉田市を襲った吉田空襲を語り継ぐことを目的に開催され、今年で42回目となります。今回は2日目の様子をレポートします。
吉田空襲とは
終戦直前の1945年7月30日、午後1時半に2機の米軍機「グラマン」が飛来。当時戦争で使う飛行機を製造したり修理をしていた「武蔵航空株式会社吉田工場」が攻撃に遭う。工場の周辺には爆弾が落ち、逃げ惑う人々も機銃掃射により被害が拡大。12名が死亡、重傷者は20数名に上ったという。
79年前の今日、ここであったこと
はじめに、空襲展の式典が行われました。開催2日目にあたる7月30日は、79年前に吉田空襲があった日と同じ日付。無事開催されたことへの感謝や平和への想いが語られました。
式典が終わって展示を見学したのち、フィールドワークが行われました。小学生や中学生など学生を中心に、約50名が参加しました。
はじめに訪れたのは、下吉田第二小学校です。戦時中なかなか燃料が手に入らない時代に、松脂を取るために植林された松が残っています。
かつて武蔵航空の工場へ送電するための変電所だった施設は、フィールドワークのために特別に開放されました。
殉難碑の前では下吉田中学校の代表生徒(富士吉田市児童生徒連絡協議会会長)から「見て聞いて語り継ぐことで、平和と幸せを届けられる。思いやりの心を持ち、力強く前に進みます」。と平和宣言があり、その後全員で黙とうを捧げました。
過去を知り、平和とは何かを考える
展示コーナーで1番初めに目に入ったのは、ジオラマや昔の写真。展示されている物品の多くは富士吉田市の市民から集められたものです。
吉田空襲だけでなく広島・長崎の原爆に関する展示もあり、広島市長・長崎市長からのコメントも寄せられていました。ショッキングな内容も含みますが、富士吉田市以外でもこのような惨劇があったのだと知ってもらうためです。
恐ろしいまま終わってしまうのではなく、過去から現在に戻って平和を築いていこうということで、「サスチェン」を放映して学んだり、平和について考えるワークショップが実施されました。
「あなたにとっての平和とは?」をそれぞれで考え、付箋に記入して貼ります。展示を見るだけではなく、平和とは何かを自発的に考えることが大切なのだそう。
アニメで学べる「サスチェン」を導入
特別企画のエリアにて、SDGsを学習できるアニメ「サスチェン」が放映されました。「サスチェン」は文部科学省選定作品に認定されており、「学校の授業」や「ご家庭内」で子どもが楽しくSDGsを学べるようになっています。
子どもたちや学生は事前に配布されたSDGs学習シートを使い、アニメを見ながらクイズに取り組んでいました。展示では答えと詳しい解説が掲示され、じっくり確認できる仕組みに。
今回会場で放映されたのはSDGsゴール16“平和と公正をすべての人に”をテーマにした「第16話 戦場カメラマンと少年兵」です。
「サスチェン」はYoutubeにて全話無料で視聴可能です。家庭での学習や教育機関での授業などにご利用いただけます。
サスチェンについて詳しくはこちら
「過去の戦争をタブー視せず、『自分ごと』として捉えてほしい」
吉田空襲展実行委員長の渡辺さん、執行委員長の渡邉さん、書記長の三井さんにお話を伺いました。
――吉田空襲展の趣旨や目的を、あらためてお聞かせください。
今年で吉田空襲展は42回目を迎えます。戦後79年というところで、自分の身近なところでも空襲があったことを伝えていきたいと考えています。また、改めて平和について考える機会を作れたらということで実行しています。
――今回、サスチェンを展示内容の一部として取り上げたきっかけを教えてください。
子どもたちに平和を伝えるっていうことを目的に検索した中で、「平和と公正」というキーワードでヒットして。特にサスチェンの16話は平和と公正について戦場カメラマンと少年兵というところで、アニメだし分かりやすいので今回吉田空襲展で流すことになりました。
SDGsという言葉もだんだん広まってきていますが、子どもたちは身近なところに感じられないっていところもあるので。
――アニメを活用して児童・生徒に学習してもらうメリットがあればお聞かせください。
お子さんでも画面の前に座ってずっと見ていて、アニメだと先入観なく子どもたちも見ることができますね。兄弟そろって事前に配布した学習シートの問題に一生懸命取り組んでいて、よく見ていたお兄ちゃんが弟に教えるという光景もありました。
――次世代に向けて、戦争の恐ろしさを伝えることの重要性についてお聞かせください。
戦争が身近ではなくなっている世代が増えていて、伝えてくださる方も年々減っています。一方で世界情勢を見るとウクライナなど戦争の話がニュースされていたり、子どもたちの関心としてはあるんです。戦争を自分ごととして捉えられているのかなっていうと微妙なんですね。
ですから過去に身近に起こった空襲をタブー視せずにあえて伝えいく。次の世代につなげていくことが平和を大切にするうえで重要なことだと感じています。
―― 書籍/活動紹介 ――
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