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ディズニーが「生態系復活の物語」を映像で伝えるバーティ氏とのメディア会議を開催 – ディズニー・プラネット・ポッシブル SDGs特集記事|リンクウィズSDGs
ディズニーが「生態系復活の物語」を映像で伝えるバーティ氏とのメディア会議を開催

ディズニーが「生態系復活の物語」を映像で伝えるバーティ氏とのメディア会議を開催

Link with SDGs編集部

『アースデイ WITH ナショナル ジオグラフィック OCEANS TOMORROW』が開催された翌日4月24日には、ウォルト・ディズニー・ジャパンが主催するメディア会議が行われました。
このメディア会議はディズニー社が取り組む「ディズニー・プラネット・ポッシブル」の活動の一環、「地球の物語を変えるために行動を起こそう」というメッセージと共に行われたもの。
当日はナショナル ジオグラフィック エクスプローラーであるバーティ・グレゴリー氏によるプレゼンテーションや、サステナブル関連メディアとのQAセッションも行われ、Link with SDGs編集部もメディアの一員として参加。
ナショナル ジオグラフィックの若き探検家は世界中の過酷な大自然で何を見て、感じ、どのような野生動物との出会いがあったのか――詳細にレポートします。

【Profile】バーティ・グレゴリー氏

イギリスの野生動物映像作家、ナショナル ジオグラフィック エクスプローラー。 2014 年にブリストル大学で動物学を学び、卒業後、ナショナル ジオグラフィック誌の写真家、スティーブ・ウィンターのアシスタントを開始。それ以来、ナショナル ジオグラフィックの 6 つのプロジェクト(「 Leopards at the door 」など)の制作と司会を務める。 ディズニープラスで「バーティ のハイテク・アドベンチャー」配信中。

サークル

地球の希望に満ちた未来を見通す、ナショナル ジオグラフィック エクスプローラーの役割

冒頭、マリア・チャン氏(リージョナルリーダー、コンテンツ&インパクトパートナーシップ、ナショナル ジオグラフィック APAC)がスピーチを行い、北極点への最初の探検やマチュピチュ遺跡の発見がナショナル ジオグラフィックの支援によって行われたこと、メディアとしてオーディエンスから信頼を得るに至った経緯などを語りました。

 

マリア・チャン氏(リージョナルリーダー、コンテンツ&インパクトパートナーシップ、ナショナル ジオグラフィック APAC)

そしてマリア・チャン氏は「視聴者からの信頼が私たちに力を与えてくれ、地球の未来に希望を持てる視点を提供するという、地球のためになる活動を続ける原動力になっています。私たちは信じています。人々が地球をより良く理解すれば、それだけ地球を守ることができると。そして、この理解への道は、私たちのナショナル ジオグラフィック エクスプローラーによって切り拓かれます」と語り、ナショナル ジオグラフィック エクスプローラーの役割について話しています。

ナショナル ジオグラフィック エクスプローラーとは、「情熱を持って未知を探りに行き、知識の限界を突破してくれる探求者」を意味します。探検だけでなく、未知の領域や新たな科学的な発見を成し遂げ、それを世界に広める役割を果たす、ナショナル ジオグラフィックのナビゲーター、ストーリーテラー的な役割を務めています。

サークル

スティーブ・ウィンター氏との出会いからナショナル ジオグラフィックへ

次いでバーティ氏によるプレゼンテーションが行われました。

バーティ氏は「日本に来るのは初めてで、本当に温かく迎えて頂いてありがとうございます。昨日のイベント(アースデイ WITH ナショナル ジオグラフィック OCEANS TOMORROW)は、本当に多くのインスピレーションを受けるものでした。さまざまなバックグラウンドを持つ多くの人々が、海と海洋生態系について学びに来ていました」と冒頭に挨拶し、ワイルドライフ フィルムメーカー(野生動物の生態や自然環境を映像化する制作者)となる経緯と、世界中を旅して得た経験について語っていきました。

 

バーティ・グレゴリー氏

 

バーティ氏はかつて野生動物写真コンテストで優勝した際、授賞式でナショナル ジオグラフィックのフォトグラファーであるスティーブ・ウィンター氏と出会い、これがきっかけでスティーブ氏の助手を務めることになります。

バーティ氏の番組は「バーティのハイテクアドベンチャー」としてディズニープラスのナショナル ジオグラフィックで配信されていますが、ドローンを始めとした様々なハイテク機器で野生動物の見たことも無いような新たな映像を捉えることに成功しています。

 

その端緒となるのはスティーブ氏の助手から始まっていますが、初めての仕事で2週間も経たないうちにドローンを大破させてしまうなど、失敗談もユーモラスに紹介。

しかし商業的に利用され始めたばかりの頃からドローンによる映像制作に携わり、この経験を経て、野生動物の生態を新たな視点で映し出す唯一無二のフィルムメーカーとして注目を集めることになります。

 

3匹のシャチが協力し合い氷上のアザラシを狩猟している場面を、ドローンで撮影

 

例えば上記写真のような場面も、ドローンによって映し出すことが可能となりました。

3匹のシャチが協力し合って氷を押し、波を発生させて氷上にいるアザラシを海中に落とす、驚くべき狩猟方法です。

水面からではほぼ何が起こっているのかが分からない出来事を、ドローンを使うことで、まったく新しい視点から正確に映し出すことができるようになりました。

サークル

人間の過去の残酷な行いと、生態系復活の物語

バーティ氏は2年間スティーブ氏の助手を行った後、ナショナル ジオグラフィックから独自の仕事を得ることができました。
その一つが、地球上で最も荒れる海としても知られる南極海のドレイク海峡、サウスジョージア島での撮影です。
サウスジョージア島はそのアクセスの難しさ、多くの野生生物がいることから、人間による開発が手つかずなのでは?と考えるのは早計です。

「この場所には非常に暗い歴史、暗い過去があります」とバーティ氏。
それはかつて、南極海において捕鯨が行われていた時代の、捕鯨基地があった場所でした。
そこでは何十万頭ものクジラが殺され、バターや石鹸などの製品が作られました。
地球上で最も大きな個体として記録された生物は、体長約33メートル(110フィート)の雌のシロナガスクジラでしたが、このサウスジョージア島付近で殺されています。

 

アザラシの子供

 

アザラシも毛皮のために狩られ、一時期はわずか400匹にまで減少しました。

また捕鯨時代にネズミが島に入り込み、島中に繁殖して鳥の卵を食べ続けました。

 

こうした人間の最悪の側面が記録として残っています。

しかし一方で、嬉しい話もあります。

捕鯨の禁止とともに島の野生動物は保護され、保護されるようになってから50~60年後、信じられないほどの回復を遂げました。

400匹しかいなかったアザラシが300万匹以上に。サウスジョージア政府は史上最大のネズミ駆除プログラムを実施し、2019年には全ての外来種のネズミを駆除したと宣言しました。その結果、多くの鳥が復活しています。

これは素晴らしいニュースです。

 

一方で、クジラの復活の物語はまだ終わっていません。

古い航海日誌には、南ジョージアには水中に数多くのクジラがいて、海を歩いて渡ることができたほど、と書かれていました。

「この古い記録のことが頭をよぎりました。もし地球のどこかに、クジラが捕鯨前の数に戻っている場所があったら、驚くべきことだろう」とバーティ氏。

そこでバーティ氏はこれを映像に収めることに挑戦します。

サークル

「バーティのハイテクアドベンチャー」への挑戦

ナガスクジラはシロナガスクジラに次いで地球上で2番目に大きなクジラの種です。
体長約24メートル(80フィート)まで成長することができ、重さも80トン(アフリカゾウ16頭分)に達します。
南極周辺で捕鯨が行われていた時代、私たち人類は78万頭ものナガスクジラを殺し、個体数はわずか2%まで減少しました。
しかしバーティ氏が撮影中に耳にした噂によると、これらのクジラが復活し、集まっている場所があるということです。
「私は『Wow!これは探求すべき物語だ!』と思いました」とバーティ氏。
バーティ氏はディズニープラスとナショナル ジオグラフィックに掛け合い、新しい番組「バーティのハイテクアドベンチャー(英題 Epic Adventures with Bertie Gregory)」制作の提案を行います。
「私たちは世界中を旅して、最も大きく、最もクレイジーな野生動物の群れを探すつもりです。しかもハイテクアドベンチャーのエピソード1では、最も困難で野心的なことをやりたいと思いました。それが南極でのクジラの群れの撮影です」とバーティ氏はハイテクアドベンチャーを手掛けるきっかけについて語りました。

 

©2023 Disney 「バーティのハイテク・アドベンチャー」
ディズニープラスのナショナル ジオグラフィックで配信中

 

1ヶ月の撮影期間の中、悪天候に見舞われて実際に撮影できるのはわずか6日間。

風速160kmを超える嵐の中、多くの日程を退避せざるを得なかった中で、バーティ氏はヒゲペンギン(Chinstrap Penguins)の巨大なコロニーに出会います。

餌を採るために海へ飛び込もうと、ラッシュアワーの通勤者のように岩礁にペンギンがズラリと並ぶ様は圧巻。

1匹のペンギンが勇敢に飛び込む様子はまさに言葉通り「ファーストペンギン」。この様子をバーティ氏が映像に収めており、見ごたえがあります。(ディズニープラスでこの大迫力の映像が見れるので、ぜひ「バーティのハイテクアドベンチャー」をご覧ください)

 

サークル

クジラは生態系に大きな影響を及ぼす存在

一方でバーティ氏の撮影隊はクジラの群れを見つけられずにいました。
5匹や10匹のグループではいましたが、期待した群れが見つからない中、チャンスの決め手になったのは世界有数のクジラ学者のリー・ヒックモット氏がクジラに取り付けたGPSタグでした。
「地平線上には何百もの噴き上げがありました。これらは、クジラが息をするときに作る大きな水柱です。そして、それはまるで古い海戦での大砲のように見えました」とバーティ氏は語っています。
ついに発見したクジラの群れはエレファント島を背景に、太陽に照らされた噴き上げとともに圧倒的なスケールの景観を織りなしていました。
ドローンで撮影した海上を埋め尽くすクジラの群れ、そして海中へ潜り、水中カメラで間近に捉えたクジラの巨大な躯体。
「このクジラを見た時、最も感動したのは、クジラは非常に長生きするということです。彼らは70~80年生きることができます。このクジラたちは捕鯨が行われていた時代に生きていた可能性が十分にあります。私たち人間が絶滅の瀬戸際に追いやっていた時代に」とバーティ氏。

 

「南極に戻ってくるクジラたちの最も興奮すべき点は、その復活の意義が、ただ南極の海洋生態系だけに及ぼすのではないということです。最新の科学によると、クジラは二酸化炭素を非常に効率的に吸収する能力を持っている(※1)ということです」。
※1 編集部注:クジラがオキアミを捕食することで、排泄物によって海面に大量の植物プランクトンが発生。植物プランクトンの光合成によって二酸化炭素が吸収される(参考:ニューズウィーク日本版「クジラは森林並みに大量の炭素を『除去』していた──米調査

「私たちは気候変動への対応策として、森林の植林と保護についてよく語ります。しかしまた別の対応策として、クジラたちの復活を助けること。これも重要になるんです」。

 

 

最後にバーティ氏は「現在、私が行くどの場所でも、野生動物は非常に困難な状況にあります。私たち人間が地球を破壊しているのです。これはとても悲しいことです。しかし野生動物を保護し、チャンスを与えると何が起こるか。それは信じられないほどの規模で復活するのです。私たちはこのような保護の成功事例を称賛し、人々に伝えることで、世界中の他の場所でも同じような取り組みが行われることを願っています」と語りました。

サークル

サステナブル関連メディアとのQAセッション

続いてサステナブル関連メディアとバーティ氏とのQAセッションが行われました。

――昨日のイベントでも海洋プラスチック問題について質問が出ていました。ここ数年で、環境に関して急激な変化を感じることはありますか?

バーティ氏

「海洋プラスチック問題に関しては、正直なところメディアが過敏になりすぎているように思います。私たちはプラスチックを多く使用していますが、それに気を取られて本来の問題から目をそらしてはいけません。以前は気候が安定していて、野生動物や自然環境の出来事が正しく季節とともに起こっていました。しかし今では気候変動のために規則正しくなくなっています。私たちの日常生活にも影響を与えるし、環境への影響も大きいです。また生物多様性も依然として厳しい状況です」。

「消費者としても、ビジネスとしても、私たちの行動すべてで環境を考慮する必要があります。皆が木を抱きしめるような、ヒッピーになるよう奨励しているわけではありません。世界中のビジネスは健全な環境があって初めて存在できるのですから」。

 

 

――10年以上自然環境に身を置いてきて、気候変動で経験した最も衝撃的な出来事は何ですか?

バーティ氏

「北極で撮影した時のことです。タテゴトアザラシは氷の上で赤ちゃんを産みます。アザラシの赤ちゃんが生まれ、泳ぎを学ぶ数週間の間に、氷上で赤ちゃんが休む場所が必要です。しかし温暖化によって、毎年、海上の氷が少なくなって氷が早く溶けるようになり、数多くのアザラシの赤ちゃんが溺れて死んでしまいました。これが私が見た中で最も衝撃的なことです」。

 

――バーティさんの言葉で「come back」というキーワードが印象的でした。野生動物が復活するパワーを、取材を通じて感じることはありますか?

バーティ氏

「はい、確かにあります。人間が自然破壊を行うことは、とても悲しいし、怖いことです。しかしなぜ前向きに考えられるかというと、自然界は自己修復能力に優れているからでえす。私たちは自然界にチャンスを与える必要があります。だからこそ、私は良いニュースに焦点を当てようとするのです。世界中で野生動物にチャンスを与え、復活した数少ない例を称えれば、それを人々が共感します。そして彼らが世界中で同じような行動に起こしてくれることを期待しています」。

 

――人間も生物多様性の一部であるとも考えられます。私たちが自然の一部であるということを体験することが必要だと思いますが、体験するためにどのようなストーリーが有効だと思われますか?

バーティ氏

「おっしゃるように、私たちは自然の一部です。新鮮な空気、清潔な水、生産的な土壌……自然環境は私たちに多くのことを提供してくれています。しかし私たちは、その恩恵を忘れてしまったために大きな問題に直面しているのです。だから、キーポイントは自然界との再接続です。野生動物がその再接続の手段として、自然とのつながりを作ってくれると思います」

 

――「バーティのハイテク・アドベンチャー」ではバーティさんは過酷な自然環境へ行くのに、いつも笑顔であることに気が付きました。ポジティブなイメージをみんなに伝えよう、というお気持ちがあるんでしょうか?

バーティ氏

「私は笑顔が伝染すると思っています。だから、もし笑顔で何かを言えば、人々は幸せになる。間違いなく私が大切にしていることです。また、たしかに過酷な環境には行きますが、恐怖心は相対的なものだと思います。例えば南極でヒョウアザラシのいる海で潜る時、私は車がたくさんいる都市にいるよりもずっと怖くないと感じます。動物の行動を深く理解している人々と一緒にいるので、実際はかなり安全に撮影をしているんです」。

 

©2023 Disney 「バーティのハイテク・アドベンチャー」
ディズニープラスのナショナル ジオグラフィックで配信中

 

――コロナ禍で世界中のビーチが以前よりキレイになったという話も聞きます。バーティさんはそういった話は聞きましたか?

バーティ氏

「このお話には2つの側面があります。コロナ禍のあいだに野生動物が人々からの休息を得たという事実。これは重要な側面です。ただし一方で、多くの保護区では観光収入が得られなくなりました。観光収入は動物を保護するために使われているのです」。

「私は2020年の終わりにケニアのアンボセリ国立公園で撮影をしていました。私は車に乗って、何百頭の象に囲まれて、とても素晴らしい経験でした。私はガイドに『今日は素晴らしいですね。他の車は一台も見ませんでした』と言うと、ガイドは『コロナのおかげです。しかし象は休息が得られても、同時に観光収入が減って、密漁から守る資金が得られなくなってしまいます』と」。

「だから野生動物に経済的な価値を与えることが重要であると再確認しました。それが彼らを保護する費用に充てられるからです」。

 

その他、数多くの質疑応答が時間いっぱいまで行われました。

ディズニー・プラネット・ポッシブル「地球の物語を変えるために行動を起こそう」のスローガンと共に、地球環境、海洋生態系について多くの発見と、具体的な行動を起こすための示唆に富んだイベントとなりました。

―― 書籍/活動紹介 ――

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