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地方創生SDGs、垣間見える行政と企業の「本気」Part1 – 地方創生SDGs国際フォーラム2023 SDGs特集記事|リンクウィズSDGs
地方創生SDGs、垣間見える行政と企業の「本気」Part1

地方創生SDGs、垣間見える行政と企業の「本気」Part1

Link with SDGs編集部

2023年2月、「イノベーションがリードする新しい『持続可能なまちづくり』の実現」を掲げた「地方創生SDGs国際フォーラム2023」が東京・大手町の日経ホールで行われました。
このイベントは内閣府と地方創生SDGs官民連携プラットフォームが主催したもので、地方の社会課題を成長のエンジンに換え、官と民が協働して経済成長を目指すための様々な議論が行われました。
実はLink with SDGsを運営する第一エージェンシーも、この地方創生SDGs官民連携プラットフォームの一員でもあります。
そこで今回はこのフォーラムの取材を通じ肌で感じたこと、官と民の温度感や熱量などを2回に分けてレポートします。

地方創生SDGs官民連携プラットフォーム

内閣府が推進するプラットフォーム。
SDGsの国内実施を促進し、より一層の地方創生につなげることを目的に、広範なステークホルダーとのパートナーシップを深める官民連携の場としてつくられたもの。
Link with SDGsも含め、約7000の企業、団体がこのプラットフォームに参加し、数多くの取り組みが行なわれている。

サークル

「稼ぐ地域のために、民間企業の参加は不可欠」基調講演で村上氏

開会に際しては、内閣府特命担当大臣(地方創生担当)・デジタル田園都市国家構想担当大臣である岡田 直樹氏と、地方創生SDGs官民連携プラットフォームの会長である北九州市市長の北橋 健治氏が挨拶。

岡田氏はイノベーションによる持続可能なまちづくりの推進の重要性を、北橋氏はグリーン・トランスフォーメーション(GX)やデジタル・トランスフォーメーション(DX)、イノベーションによるまちづくりの形成をより実行性の高い取り組みへと昇華する必要性などを語っています。

 

続いて基調講演として、一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター理事長の村上 周三氏が登壇しています。

村上氏は日本のSDGs達成度ランキングについて言及。日本は「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」のランキングが低いものの、「目標11:住み続けられるまちづくりを」については上位にランキングしていることを指摘し、「地道な努力が『まちづくり』への高い評価へとつながっているのではないか」と語っていました。

また村上氏は自治体のSDGsと企業のSDGsが連携した「稼ぐ地域」を創り出していくことが大切であると話しています。

稼ぐ地域のために民間企業の参加は不可欠であり、企業としては外部発信による自社ブランドの強化や連携の水平型化、自治体としては地域経済の活性化を挙げています。

「今後も官と民のマッチングは増える」と村上氏は見ており、自治体や企業が利益を出しながら、地域課題をイノベーションをもって解決する取り組みが進むと語っています。

 

住宅・建築SDGs推進センター 理事長 村上 周三氏
サークル

地球環境の変遷から日本の課題、最先端の取り組みまで――ソフトバンク社長 宮川氏

特別講演では、ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川 潤一 氏が登壇。「デジタルの社会実装による地域の社会課題解決」をテーマに、SDGsに関わる踏み込んだ講演を行っています。

冒頭、宮川氏は「100年後、私たちの住む地球はどうなっているだろうか」という壮大なテーマから言及。

 

ソフトバンク宮川氏発表資料より

 

産業革命以降の人口の増加、そしてこの200年で人類が手にした「豊かさ」。

その経済発展とともにエネルギー消費は激増し、温暖化や近年の自然災害が頻発していること、子どもたちがどんな時代を過ごすこととなるのかまで、過去、現在、未来に至る道すじを語っています。

 

そうした中、海面上昇で水没危機にあるオランダのアムステルダムのスマートビル先進事例を紹介。

郵便局のビルに6.5万個のセンサーを設置し、温度、湿度、CO2などを最適化し、メンテナンスや清掃の効率化などを行いエネルギーを70%削減していることを紹介しています。

ソフトバンクではこうした先進事例に学びながら、AIが自律的に判断し、あらゆる活動を最適化するビジネスモデルを提唱。

スマートビル化によってテナント向けにデータ活用することができ、混雑状況に応じたスタッフ配置、店舗への送客、フードロスの低減、警備員や清掃員の配置など、様々なことがAIによって最適化できると話しています。

 

ソフトバンク社長 宮川氏

 

また、ソフトバンク本社オフィスは移転によって消費電力を60~70%削減したことを紹介。

もしこの省エネ効果を東京都23区のビル全てに展開できた場合の削減量は「年間51億kwh、経済効果は約1,370億円=東京都の18%、約127万世帯分」にも及ぶと話しています。

 

ソフトバンク宮川氏発表資料より

 

一方で、地域交通における課題についても話しています。

地域交通において、通院が困難、買い物が困難、公共交通機関の維持が困難である現状を説明。

茨城県境町の自動運転バスや、長野県伊那市の移動する医療サービスについて語っていました。

最後に、地域ごとに異なる課題の解決、日本全体のサステナビリティ実現へ向けて、課題を1つずつ解決する必要性と「安心して暮らせる未来を次世代を担う子どもたちに」と熱く語られています。

サークル

パネルディスカッション「カーボンニュートラル・デジタルを原動力とした地域課題解決」

パネルディスカッションでは、「カーボンニュートラル・デジタルを原動力とした地域課題解決」をテーマに以下のパネラーが討論を行いました。

・徳島県徳島市 市長(2022年度SDGs未来都市) 内藤 佐和子 氏

・日産自動車株式会社 理事 渉外担当役員 後藤 収 氏

・スウェーデン大使館 大使 ペールエリック・ヘーグベリ 氏

・北海道上士幌町 町長(2021年度SDGs未来都市) 竹中 貢 氏

・【ファシリテーター】内閣府地方創生推進事務局 内閣審議官 西 経子 氏

 

 

冒頭、徳島市長である内藤氏は、SDGs未来都市・徳島市が目指す持続可能な循環型まちづくりについてスピーチ。

ヤマハ発動機との官民連携、経済と環境が両立できる仕組みづくりについて語っています。

 

続いて日産自動車の後藤氏はEVを活用したまちづくり連携について、福島県浪江町での実証実験、阿蘇市・佐世保市EV優遇策の地域活性化、京都府内のタクシーでの軽EVでの辞令を紹介。
また「ブルー・スイッチ活動」が全国で200を超えたことを報告。

「ブルー・スイッチ活動」とは、日産自動車が、ゼロ・エミッション社会実現を目的に、EVを通じて全国の自治体や企業など、多くのパートナーと共に、環境、災害対策、エネルギーマネジメント、観光、地方の交通課題などの地域課題解決に向けた取り組み。

電動化の波が全国へ訪れていることが実感できる内容でした。

 

スウェーデン大使のペールエリック・ヘーグベリ 氏は、スウェーデンにおいてデジタル化と環境にやさしい変革(Green transformation)を通じてSDGsの達成を目指していることを言及。
スウェーデンはIMD世界デジタル競争力ランキング(2022年)において3位にランクイン。デジタル技術と環境にやさしいソリューションの共生を目指していることを語っています。

一方で北海道上士幌町長の後藤氏は、人よりも牛の飼育頭数の方が10倍も多い町において、スマートタウン構築とゼロカーボン実現を通じた持続可能なまちづくりについて語りました。また上士幌町MaaSプロジェクトとして、自動運転バスの運行やドローンによる夜間捜索支援サービスの実例を紹介しています。

 

北海道上士幌町長 後藤氏発表資料より

 

次いでパネルディスカッションの初めの論点は「脱炭素の実装化の方向性と、促す仕組み」について。

徳島市長 内藤氏「『水都 とくしま』として観光資源である周遊船を電動化しましたが、これによって脱炭素の取り組みへとつながります。こうした取り組みのように、自分ごと化する市民、自分ごと化する企業をいかに増やすかが大事だと考えています」

 

徳島市長 内藤氏

 

日産自動車 後藤氏「EVには、震災時の非常用電源として使えるなど、自動車だけではない価値があります。それを知ってもらうことが必要で、ブルー・スイッチもその取り組みのひとつです。脱炭素を理解してもらいながらEVの普及に努めています」

 

日産自動車 後藤氏

 

スウェーデン大使 ペールエリック・ヘーグベリ 氏「日本は長い間、イノベーション、技術的なソリューションを提供してきました。日本政府、都道府県、市町村、民間の会社において、少し自分に自信を持って、そういったソリューションがあるんだ、やってみるんだという気持ちを持って頂ければと思います。そして試行錯誤を恐れないことが重要だと思います」

 

スウェーデン大使 ペールエリック・ヘーグベリ 氏

 

次の論点は「デジタル化を取り込んだ地域活性化」について。

内閣審議官 西氏「スウェーデンはデジタル競争力が世界3位ということで、そうなった要因はどのようにお考えでしょうか。またデジタル化推進における障壁・バリアについてお聞かせください」

スウェーデン大使 ペールエリック・ヘーグベリ 氏「(スウェーデンは)需要があって起こったデジタル化なんですね。国土は大きいけれども人口密度が低い国だと、都市間の移動も時間がかかるし、ちょっとした移動にも時間がかかり、そこで需要が出てきました。また、スウェーデンに生まれると社会保障番号(日本で言うマイナンバーに類する制度)が付与されます。税、銀行、大学、病院など全部つながります。短時間で税金など様々な手続きが済みます。日本人の多くの方は効率を求めています。マイナンバーを使った改革などは社会の効率化、時間の使い方、自治体の役割に対して大きな利益があると思います」

 

内閣審議官 西氏「デジタル化と社会のあり方についてコメントを頂きました。上士幌町のMaaSプロジェクトではどのような成果がありましたか?」

北海道上士幌町長  竹中氏「地方における課題として、上士幌町では人口減少がいち早く進んでいました。さらには地域経済も縮小していくという課題がありました。それをどのように解決するか考えた時に、ひとつには都市と地方との距離感をデジタルによって時間軸を縮められないかと。どうしてもインフラとしてのデジタル化が必要で、まちづくりを進めてきました。その延長線上で、スマートシティがあり、都市と地方の格差の是正、不便、不利、不安などをデジタル化によって解決できるだろうと考えています。また、地方から外に出ていく一つの要因として、地域交通の問題もあります。お年寄りが90歳になっても免許証を手放せない。そういった不便が解消しないと、ますます地方が疲弊していく。こうしてデジタル化によるMaaS事業に強い関心を持ちました。デジタルの取り組みは、福祉、保健、農業など様々なことに活用でき、最先端のまちづくりがデジタルによって進んでいくと考えています」

 

北海道上士幌町長  竹中氏

内閣審議官 西氏「内藤市長もSDGs未来都市として、どのようにお話を聞き、考えられていますか?」

徳島市長 内藤氏「スェーデンでは効率を求められているというお話を聞き、その通りだと思っています。一方で、これまでシステムに対しての投資をしてこなかった都市があります。徳島市もそうなんですが、地方都市としてデジタル化、効率化に遅れないよう日本の色んな町が取り組まなければならないと感じました。官民連携をしながら、引き続き頑張っていきたいと思いました」

 

内閣審議官 西氏「後藤理事から国内の各地域の取り組みを聞き、どのように感じられたか、今後の自治体との連携についてのお考えをお聞かせください」
日産自動車 後藤氏「エネルギーマネジメントを行っている浪江町において、まさにそういった取り組みを行っています。高齢者の移動をする際に、バスやタクシーが無い。いま実証実験を行っていて、いかに低コストでモビリティを作れるかということで、デジタルの停留所を100ヶ所以上置いて、できるだけ少ない車の数で運営する。今まで地方自治体が公共交通機関を維持してきた補助金を半分にできるシステムが作れれば、世界中で展開できると考えています。こうした新しい取り組みも行っています」

最後は内閣審議官 西氏がセッションのまとめとして、多様なパートナーシップを構築しながら、地域課題解決を強力に推し進めていくこと、多様なパートナーシップから自分ごと化を進めていくことについて触れ、「DX、GXは持続可能な人間が中心の社会を作る、社会に大きなビジネスチャンスを作るもの」とスウェーデン大使の言葉を引用しながら、「各地域で新しい取り組みを進めていきたい、政府としても後押しをしていきたいと感じました」と語っています。

 

内閣審議官 西氏

 

――Part2へつづきます(近日公開予定)――

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